AigentXのパーソナライゼーションで、価値を知る人に、価値あるものを届ける – 「まんだらけネット通販」


 

懐かしの漫画やおもちゃ、コレクショントイ、レアな同人誌……。マニア向け中古グッズの販売で世界最大級の在庫を持つまんだらけは、ネット通販の世界でも特異な存在です。独特の在庫管理・流通システムを持ち、さらに顧客もマニアぞろいというユニークなビジネス環境で、パーソナライズド・マーケティングの実現するために選ばれたのは、シルバーエッグの新ツール『Aigent X』でした。その取り組みは成功したのでしょうか? 株式会社まんだらけWeb制作部部長 田中幹教氏にうかがいました。

 


 

実は「モール型」。1千万種の中古アイテムを扱う通販システム

▼まんだらけのWebサイトには、言葉を選ばず言えば「古き良き時代の猥雑さ」みたいなものが感じられます。どのような経緯でこのようなサイトとなったのでしょう?

そもそも、まんだらけは漫画専門の古書店として始まりました。次第に様々な趣味を持つ人が集まるようになり、取り扱う古物商材も自然と増えていきました。古美術からコスプレグッズまで、多種多様な「その道の趣味人」たちが、店舗にもサイトにも集います。

ですから、経営戦略として「特にこのジャンルに注力しよう」というものはありません。全年齢、全地域、全商品を対象として、全方位で買い取り、販売していきます。「注力したいジャンル」を持っているのは常にお客様(ユーザー)の方ですから、そのニーズに応えるのが、まんだらけの使命です。結果として、全体で1千万種以上(うち通販対象は800万種)の中古アイテムをストックしています。

 

▼1千万“種類”というと、通常のECではあり得ない莫大な数ですね。ECシステムの運営も難しいのではないでしょうか?

 実はまんだらけのネット通販は、在庫や受発注の管理を、全国に14ある店舗ごとにやっています。ブランドとしてはひとつですが、実態は14店舗が集まった「モールサイト」と言えます。

店舗には、自らも趣味人として極めているプロフェッショナル店員が数多くいます。お客様との対話で培った目利きのセンスは品揃えにも反映され、店の個性が生まれます。「店舗とECは別」というやり方ではその良さが活かせません。店舗の良さをネットでも体験してもらうため、このようなモール形態になっています。

 

私の所属するWeb制作部ですが、実は社内の情報システム部が母体となっており、いまも兼任しています。純粋に情シスとして内向きの仕事をしていたら、このようなサイトはつくれなかったかもしれません。情シスが自らお客様向けサービスの企画・運営を行い、販売現場の「こういう風に売りたい、買い取りたい」という声を聴けたからこそ、莫大な在庫を集約し、店舗の売り上げにも還元できるシステム開発ができたと思っています。現在、各店舗のEC売上は、平均して50%を超えるようになっています。

 

趣味人たちが集まるがゆえに起こる「見つからない」問題

▼まるで商品のジャングルのようなまんだらけ通販ですが、お客様に使っていただく上での課題はなんだったのでしょう?

お客様には一人ひとり異なる趣味・嗜好があり、求めている商品は多様です。店頭であれば店員のサポートもありますし、商品がありそうな棚に“当たりをつけて”探すこともできるのですが、ネットショップにはカテゴリー分類とキーワード検索しかありません。お客様が本当に欲しいものが見つけられているのだろうかという課題は常に感じていました。

たとえば、「昔見たカッコいい怪獣のソフビ(人形)を探している。ただ、有名な特撮ヒーロー番組に出てきたものではないと思う」といったご要望を持つお客様は、どうしたら目的の商品に会えるでしょう? 昭和のマイナーな特撮番組はたくさんあるし、そもそも特撮番組以外のおもちゃかもしれません。探し方のヒントが乏しいのです。

そこで、検索とカテゴリー分類に並ぶ第3の商品提示案として、AIによるコンテンツのパーソナライズ(レコメンド)という方法を検討しました。AI独自のお客様分析で、私たち人間のスタッフが想定し得ない「顧客の求めている商品」を提案することができるのでは、と考えたのです。

 

様々な技術課題を乗り越え、圧倒的な成果を実現

▼レコメンドエンジンを使った商品のパーソナライゼーション実現にあたり、どのようなプロセスを踏まれましたか?

まずは自社開発を考えました。大学で研究をされている方とコンタクトを取り、まんだらけネットショップに最適な機械学習エンジンを作れないかと検討したのですが、やはりゼロベースでの開発はハードルが高いなと感じました。

そこで、開発検討の傍ら、すでに商業ベースで実績のある企業さん何社かと相談して、テスト導入を行うことにしました。ただ、当社のECシステムの独自性と、商品点数が多いわりにお客様の趣味嗜好が分散しがちというユーザー傾向が課題となり、一般的なレコメンドアルゴリズムではなかなか成果が出づらかったようです。

足掛け3年にわたる検討プロジェクトを経て、最終的に選んだのが、シルバーエッグ・テクノロジーの新型ツール『Aigent X』でした。

 

▼Aigent Xのどこにメリットを感じられましたか?

結果から言えば、まず成果(コンバージョン)がずば抜けてよかったです。アルゴリズムの柔軟なカスタマイズができるということで、当社のユーザー傾向に合わせて成果の出やすいチューニングを行っていただけました。また、もう1点よかったのが表示速度です。読み込み時間が短く、パーソナライズされた商品がサクサクと表示されます。

アイテムの表示という点では、当社在庫管理方が独特なせいもあり、いま在庫のある商品だけをパーソナライズして表示しようとすると当社のサーバーに負荷がかかるという問題がありました。これについても、Aigent側で5分単位で在庫マスターと連携する仕組みを開発いただき、当社サーバーに負荷をかけることなく、在庫商品だけを選んで表示できるようになりました。

 

AIならではの手法で、プラス2千万円の売上を作る

▼Aigent Xでパーソナライズされたレコメンドについて、どのように評価されていますか?

実は、「よくわからないモノが出てくるようになった」というのが最初の感想でした。店舗の商品プロフェッショナルからの意見だったのですが、ある商品のページに、なぜこんな商品が「おすすめ」として出てくるのか、まったく関連性がわからないと言うのです。

そこで、商品プロフェッショナルの考えに沿ったレコメンドの方式(商品カテゴリーの繋がりをベースとしたもの)を、シルバーエッグにテスト的に作っていただき、Aigent Xのネイティブアルゴリズム(ユーザーの閲覧アイテムの相関分析によるもの)と比較テストをしました。

 

結果は、Aigent X側の勝利でした。私たちも「なぜか」は分からないのですが、AIによってパーソナライズされた商品の方が確実に多くクリックされ、購入されているのです。おそらく、プロの視点でもわからない、お客様1人ひとりの好みの繋がりみたいなものを捉えて、提示しているのだと思います。

数字でいうと、Aigent Xが提示したレコメンド部分の売上は、月額2千万円に迫る勢いです。割合で言えば、当社のEC販売の約5%を、AIが作り出しているということになります。いろんな意味で、面白いですね……。

 

パーソナライゼーションで、単なる消費に終わらないマーケットを

▼今後、Aigent Xをどのように活用されていくのでしょう?

まずはっきりさせておきたいのが、Aigent Xによるパーソナライズが良いからと言って、今までの店員のカテゴリーに基づく商品提示を否定するものではないということです。人間の熟達した商品キュレーションと、機械学習アルゴリズムによる新しいパーソナライゼーション、どちらも活用していきます。

 

そのうえで、Eメールのパーソナライズは、Aigent Xを使ってやっていきたいです。今まで私たちは、Eメールによる商品紹介には手を出してきませんでした。お客様の趣味に合わないアイテムを紹介しても嫌がられるだけだというのは、自分たち自身がよく分かっていたからです。しかしAigent Xなら、お客様ごとに1通1通紹介する商品を変え、好みの商品が並んだ棚を毎月チェックするような感覚で、自然な提案ができるのではと考えています。

また、地域特性など、今のアルゴリズムでは考慮していないデータを使って、どれだけパーソナライズの精度があげられるのかなど、実験してみたいこともあります。シルバーエッグのコンサルタントの方には、もう少しお付き合いいただければと考えています。

 

最近はSDGsの潮流もあり、商品のリサイクルに対する考え方も変わってきました。商品を売るだけ、買うだけではなく、漫画やキャラクターグッズという文化資産を、コミュニティや社会のなかでどう共有化していくのかという発想が浸透しつつあります。

私たちの仕事というのは、マーケットを整理し、中古品にどんな価値があるのか、気づいてもらうことだと思います。パーソナライゼーション技術で、価値を感じられる人に、価値のあるものを届けられる、そんなネットショップを作っていきたいです。

 

(取材 / 編集:園田 真悟)



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