商品のこだわりを伝えるオンラインショップで、CVRの向上ポイントを見つけ出す – 「聖林公司」
米国から輸入したUSEDウェアを取り扱うハリウッド ランチ マーケットが東京にオープンしたのは、1972年のこと。以来、運営企業である株式会社聖林公司(1975年設立)は、日本のアメリカンカジュアルスタイルをけん引し続けてきました。
現在はブルーブルーなどのブランドを全国に展開する同社ですが、原点であるハリウッド ランチ マーケットは半世紀を経た今も、代官山の1店舗だけ。こだわりのブランド体験を維持しつづける聖林公司は、デジタルの世界でどのようにビジネスを伸ばそうとしているのでしょうか? デジタル戦略部部長、須永 裕介氏にお話しをうかがいました。
ECでは個々のブランドを大切に、かつ全体の方向は一つに
▼複数のブランドを展開される聖林公司さんですが、公式オンラインショップはデジタル戦略部という部門で一元管理されていらっしゃいます。どのような狙いがあったのでしょう?
現在のECとオンライン広告を一体化したデジタル戦略部が立ち上がったのは、2020年の夏のことです。それまではさまざまなデジタル施策が“点”として動いていましたが、会社が進むべき方向に対して、きちんと向きを合わせられていなかったのではないかという懸念がありました。そこで、オンラインでの情報の発信源をひとつにし、個々の“点”を“線”で結んで、大きな流れを生み出せるようにしたのです。
当社の持つ複数のブランドで、ぞれぞれ個別に物事を進めるのではなく、マーケティングとして共通化できる部分は一体的に強化し、一方で個々のブランドについてはキャラクターをより際立たせる。こうやって、お客様に当社の商品の魅力がより明確に伝わりやすくなるのではと考えています。
▼公式オンラインショップの運営に当たって重視していることをお聞かせください。
まず、個々のブランドイメージを最大限に尊重することが重要だと考えています。商品の写真も、ただ拡散されればよいのではなく、きちんとクオリティの高いものを掲載して、個々の商品のイメージを大切にしています。
マーケティングの仕組みに関しては、お客様誰もが、どこにいても、好きな商品をすぐに入手できるようにすることが重要です。あるブランドでプロモーション・キャンペーンが走れば、対象者にもれなく告知メールを配信するとか、そういう基本的なことをしっかり取り組んでいかなければと思っています。
また、最近は海外でのブランド認知度も上がっています。海外のお客様であっても、ECサイトを通じて確実に商品を入手できるようにするため、対応を進めています。
自分たちでコントロールできるデジタルツールを
▼サイトの顧客体験向上のために、どのようなツールを活用されていますか?
海外のお客様の体験向上に必要な翻訳プラットフォームのWOVN.io、また海外配送サービスのzig-zag(ジグザグ)などがあります。当社は国内配送もインハウスでやっていますが、海外配送は専門事業者の仕組みを活用して行ったほうが、結果的に質が高まります。
このほかにも、専門性がデジタルでは難しいサービスは、専業のサードパーティサービスを使います。オンライン試着のVirtusize(バーチャサイズ)や、シルバーエッグのレコメンドエンジンがそれにあたります。
▼レコメンドエンジン導入で解決したかった課題はなんでしょう?
もともとレコメンドは、別のツールのオプションで提供されていたレコメンドエンジンを使っていたのですが、運用管理が煩雑な割に、実現できるレコメンドの自由度が低いと感じていました。たとえば商品カテゴリーを越えたおすすめが難しかったり、誰が見ても同じレコメンドばかり出てしまったりという問題があり、結果としてECサイトでのレコメンドの効果が伸び悩んでいました。
そこで、専業ベンダーによる高度なレコメンドエンジンの導入に踏み切りました。シルバーエッグのレコメンド(アイジェント・レコメンダー)は過去に触れたことがあり、運用負荷がさほど高まらないというのは知っていましたし、メールでのレコメンド機能(レコガゾウ)も面白いと思っていました。これを使って、レコメンドももう一度頑張ろうと思ったわけです。
レコメンドの導入でわかった、意外なCVR向上ポイント
▼アイジェント・レコメンダーの導入は、スムーズに進みましたか?
導入決定から本番稼働までは3か月ほどかかりましたが、特に面倒は感じなかったです。ただ、手間取るところがなかったわけではありません。ポイントは実装を担当する業者さんとの連携だと思います。レコメンドタグの設定や、メールレコメンド用のCSSの調整など、いくつかきちんと仕様を理解して作業してもらわないといけない作業がありました。
本番稼働後、レコメンドAIが必要とするデータの収集が済むまでは、シルバーエッグが提供するリアルタイム売上ランキングによるレコメンドを補填として使いました。また、シーンに応じたレコメンド内容のチューニングについては、シルバーエッグのコンサルタントの提案通りに開始しましたが、事後にABテストを行い、その設定の正しさを確認しています。
▼レコメンドの成果を伸ばすため、工夫されたところがあればお教えください。
これもシルバーエッグのコンサルタントからの提案だったのですが、サイトのTop画面で、新着アイテムのすぐ下に、レコメンドを見せるという設定を行っています。当時はいきなりレコメンドを見せて、本当に意味があるのかと半信半疑でしたが、結果としてCTRもCVRも大きく跳ねました。これは発見でした。
コンバージョンの多いメルマガを、AIレコメンドでさらに伸ばしてゆく
▼レコガゾウによるメールレコメンドは、どのように活用されていますか?
当社はもともとロイヤルなお客様が多く、メールマガジンからの売上はかなり多い方でしたが、レコメンドによってさらに成果を伸ばすことができていると思います。最初は通常のメルマガの一番下にレコメンド枠を表示していたのですが、本文の上の方に持ってきて、お客様が気になる商品が目につきやすくしたところ、コンバージョンがかなり上がりました。
このほか、購入後のフォローアップメール内でパーソナライズされた追加の商品提案をしたり、通常のメルマガ以外にレコメンドアイテムだけを並べたメールを送信したりしています。このレコメンドオンリーのメールは非常に反応が良く、お客様に喜ばれているようです。
メルマガは2か月に1度程度、ABテストを行っています。KPIが落ちてきたら少しレイアウトを変えてみるなど、細かい修正を重ねて、ロイヤルなお客様が常に心地よく使っていただけるようにしたいです。
商品へのこだわりを伝えることのできるデジタルサービスを
▼聖林公司の今後のデジタル展開について教えてください。
越境ECはより強化していきたいと思っています。また、B2B向けのサービスも今後の検討のひとつです。当社はホールセールも行っていますので、現在のECサイトで培った顧客体験を活用して、企業のお客様にも満足いただけるサービスを作っていきたいです。
国内B2C、越境B2C、B2Bと、今後考えられる展開はさまざまですが、重視するのはやはり商品の質です。私たちは小さな会社ですが、だからこそ商品を1つ1つこだわって作っています。バーチャル試着やパーソナライゼーションなどのツールも使いながら、デジタルの世界でもそのこだわりをきちんと伝えていきたいですね。
(取材 / 編集:園田 真悟)
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