コールセンターの充実とレコメンドエンジン活用で顧客満足度を上げる – 「THS-白衣NET」
「THS-白衣NET」は、医師や看護師、介護福祉士など医療の現場で働く方のユニフォームを主に扱う通販サイトです。複数のメーカーの機能性の高いユニフォームと、ナースシューズやポーチ、マスクなどの周辺商品を取りそろえ、ワンストップで購入できることから、医療機関を中心とした多数のユーザーに信頼され、顧客満足度&シェアNo. 1を獲得しています。
特定の業界に特化した“B2Bアパレル”という独特の業態で、顧客である医療従事者との長期的な関係を維持していくために、THS-白衣NETはカスタマーサポートを中心とした顧客体験向上施策に取り組んでいます。白衣NETのマーケティング施策の効果について、株式会社ティーエッチエス 宗實 祥広(むねざね よしひろ)氏に語っていただきました。
【INDEX】
・医療従事者向けビジネスの現状
・NPSに支えられた顧客満足度施策
・レコメンドエンジンを使いこなす
・AIとの協業を見据えて
医療従事者向けビジネスの現状
▼THS-白衣NETを運営するティーエッチエスとは、どんな会社でしょうか?
ティーエッチエスは、医療用ユニフォーム・飲食店向けユニフォームなど、さまざまな業務用ユニフォームを取り扱う販売代理店です。白衣・ナース服の販売シェアNo.1を誇る「THS-白衣NET」のほか、飲食店ユニフォームの「ユニコレ」、医療用品・歯科材料の「MEDICAL MARKET(メディカルマーケット)」と、3つのECサービスを運営しています。
白衣のネット販売は20年前から開始しており、業界での先駆企業の一つとなりました。ティーエッチエスは従業員数25名ほどの会社ですが、小規模だからこそできるお客様への血の通ったサービスと、ベンチャーマインドが特徴です。私は同社の経営戦略・マーケティングチームに所属し、新ビジネスやサービスの導入検討、新規市場の開拓、既存顧客へのクロスセル・アップセル施策など、さまざまなミッションに携わっています。
▼医療従事者向けのビジネスは、この数年のコロナ禍で大きな影響を受けたと思います。
おっしゃる通り、医療系の需要は大きく伸びました。当社サイトでも、マスクやニトリル手袋などの消耗品や、飛沫感染対策商品のフェイスシールド、医療ガウンなどが大量に求められることとなりました。一方、新規事業だった飲食店ユニフォーム販売は、足踏みすることになってしまいました。
コロナ禍での医療品ニーズ増を単純に喜ぶことはできません。しかし、この期間を通じて、私たちは多くの医療従事者の皆様に、ネット通販のメリットを理解していただくことができたと思います。当社の経営理念は「献身的に日々身を粉にして働かれている“白衣ユーザー”や“ユニフォームユーザー”のために、少しでもお役に立ちたい」ですが、多くの患者様への機動的な対応が求められていた医療現場に、ECの発注の容易さやスピード感が役に立てたのではと考えています。
クリニックでは小規模経営のところも多く、ITにそれほど詳しくない職員の方々も多くいらっしゃいます。そういった方々にもECを受け入れていただけたことは、大きな励みです。今後はサイトの利便性をさらに上げ、より長く使っていただけるような施策を充実させようと考えています。
<インタビューにお答えいただいた宗實 祥広氏>
NPSに支えられた顧客満足度向上施策
▼顧客満足度を上げるために、どのような施策を取られているのでしょうか?
定期的にNPSを実施し、顧客体験の評価・改善を行っています。特に、医療の現場で働く方のニーズに対応したサービスがご好評をいただいています。
たとえば、試着サービスの充実です。当社では商品を10点送付して、お客様が選んで購入することができます。医療現場で働く皆様の好みは多様ですし、発注時に自分にぴったりのものを選べない状況もあるかと思います。また、メーカーの写真モデルのスタイルが良すぎるというお声もあります。こちらとしては多少コストがかかっても、お客様でしっかりと選んでいただけるようにした方が、結果的に信頼いただけるサービスになると考えています。
これらの施策の中でも特に力を入れているのは、コールセンターによるサポートです。医療従事者の皆様はとても多忙ですし、ネット利用にまだ不慣れな方もいらっしゃいます。ミスなく丁寧な受発注を行うため、こちらからお客様に積極的に電話をかけ、確認するようにしています。
電話サポートは、事務的に手続きを行うだけではなく、お客様に寄り添った言葉選びを心掛けています。たとえば、「新しいスクラブの色、派手かしら?」というお客様の言葉に、「そうですね、元気が出る色ですよね!」といったポジティブな言葉をかけ、心地よく着られるように促すといった具合です。同じ医療用品でも、一人ひとり求められるものは違います。お客様に応じた対応を、当社コールセンターでは心掛けています。
コールセンターの積極活用は、小回りの利くB2B-ECならではの施策だと思います。このほかにも、納品物にメッセージカードを添えるといった何気ない施策が、ご好評をいただいています。一見無味乾燥に見られがちなECの仕組みに、人間的な買物体験を加えていくことで、医療現場の皆様に満足いただけるようにしています。
▼シルバーエッグのレコメンドエンジンも採用いただきましたが、お客様の買物体験にどのような影響を与えましたか?
シルバーエッグのレコメンドエンジン導入のきっかけは、サイト内でお客様がクリックしたくなる商品を提案できていないのでは、という課題感でした。
たとえば、もともと利用していたレコメンドエンジンは、お客様が閲覧している商品と関連性の低い商品が表示されがちで、商品ごとに何をレコメンドするのか手動での設定が必要でした。また、当社は複数のメーカーの商品を取りそろえているため、商品が廃番や価格変更の頻度も高めです。既存ツールでは、この反映がスムーズにできず、リンクエラーが発生しがちでした。
これらの課題を改善するために、シルバーエッグの「アイジェント・レコメンダー」を導入しました。導入時、カートシステムの都合でデータ連携の部分に調整が必要でしたが、動き出してみるとばっちりです。導入前から注目していたAIによる顧客のニーズ分析がきちんと働いており、当社スタッフが見ても、腹落ち感のある商品がレコメンドできています。また、データの連携頻度が密なので、廃番品がレコメンドされるようなこともありません。
現在、当社サイトで商品を購入される方の約20%が、レコメンド経由で商品を選んでいます。これは、シルバーエッグのAIが出すレコメンドが、お客様一人ひとりに受け入れられている証拠かと思います。また、チューニングや効果測定が容易にでき、PDCAサイクルをまわしていけるようになったのも、評価ポイントです。
レコメンドエンジンを使いこなす
▼レコメンドの利用で工夫されたところはありますか?
顧客コミュニケーションを向上させるため、リアルタイム・レコメンドメールサービス「レコガゾウ」も、あわせて導入しました。サイトと同じクオリティのレコメンドが、メールで提案できる点は非常に気に入っています。
実はレコガゾウ導入後に、レコメンド機能を標準で備えたMAプラットフォームを導入したのですが、どうしてもレコガゾウの機能は残したく、MAベンダーさんにお願いして、MAのシステムを改修してもらいました。HTMLを直接編集しなくても、GUIメール作成機能から、レイアウト崩れを起こすことなくレコメンドを挿入できるようになり、重宝しています。
これ以外の工夫としては、レコメンドアイテムを単にサイト内で並べて見せるだけではなく、当社のマスコットキャラが紹介するように見せる仕組みを作っています。お客様にとってより親しみやすく、また商品を発見しやすくすることで、転換率が上がっていくと思います。
<マスコットキャラがおすすめ商品を提案>
AIとの協業を見据えて
▼THS-白衣NETのこれからについて教えてください。
冒頭申し上げた通り、今後は新たなチャネルでの顧客の開拓だけでなく、獲得したお客様をどうフォローして、定着させていくかが重要になってきます。よりきめ細やかなサービスのため、顧客のセグメントに応じた販促や、商品発送時のパーソナライズされた広告封入など、いくつか施策を考えています。
いまは、AIと協業していかないと、ビジネスも生き残れない時代だと思います。顧客が欲しいものを予測して提案できるレコメンドAIの仕組みは、いろんな場面でも使えるのではないかと思います。今後もベンダーの皆様と相談しつつ、顧客満足度の向上につながる工夫を重ねていければと思っています。
(取材 / 編集:園田 真悟)