丁寧なコミュニケーションが、20を超えるブランドのECを支える – 「イトキンオンラインストア」


創業70年を超える老舗アパレルメーカー、イトキン株式会社。a.v.v、コシノヒロコなど、20を超える多彩なブランドを擁し、その製品は幅広い年代のお客様に親しまれています。イトキンのデジタル戦略は、独立した各ブランドサイトと、ITOKINブランドで一元化されたオンラインストアの組み合わせです。複雑な運用を求められるモール型ECサイト運営のコツは、どこにあるのでしょうか? イトキン株式会社WEBビジネス部 リーダー 地引毅氏に、インターナルコミュニケーションを重視する手法と、レコメンドエンジンを活用したスムーズな顧客体験の実現についてお話をうかがいました。

 

【INDEX】
・社内にも、お客様にも、丁寧な対応が基本
・ポップアップとレコメンドの連携で、セット率をさらに改善
・メールからの売上に再注目

 


社内にも、お客様にも、丁寧な対応が基本

▼イトキンのEC部門についてお聞かせください

複数のブランドを販売する当社サイトは、WEBビジネス部が統括して運営しています。EC全体の売上管理はもちろん、ECシステム開発と運用、サイト全体のUI/UX、販売施策立案、広告やSEOなどの集客企画、サイト全体のトーン&マナー管理やレギュレーション管理など、多岐にわたります。

 

私は6年前からWEBビジネスの担当をしていますが、もともと情報システム部の人間でした。ですから、ECの仕組みは上流から下流まで理解があります。ECの仕組みで出来ること、出来ないことが見通せているのが強みですね。

 

一方で、商売の先頭に立ってきたわけではありませんでしたから、部門に移って以来6年間、まだまだ勉強の日々です。

 

イトキン株式会社WEBビジネス部 リーダー 地引毅氏

自社モール運営には、社内コミュニケーションが重要と語る地引氏

 

▼20を超えるファッションブランドを、イトキンという一つのサイトで表現し販売していくのは、大変なのではないでしょうか?

確かにそうです。それぞれのブランドの良さは、単にデザインの違いでなく、売り方・見せ方といった総合的な思想の違いがあるからこそ出るものです。各ブランドのECに対する温度感や方法論もさまざまで、EC販売に懐疑的な事業部も、昔は相当ありました。

 

なぜECへの参加をためらうかと言えば、それはファッションのブランド価値を伝える店舗での体験が損なわれるからです。価値の伝え手である店舗スタッフの売り上げが下がることは避けたいというのは当然だと思います。また、百貨店やショッピングセンターの戦略との整合性もあります。

 

ECモールの統括部門としては、各ブランドの価値を尊重することが、モール全体を伸ばしてゆく上で大事だと思っています。それぞれのブランド担当と話し合い、メリットを引き出せるキャンペーンを企画したり、他のブランドの成功事例を社内展開したりといった施策を、コツコツと積み上げていきました。売上の評価制度を変えてECに注力しやすい下地も作ってきましたが、ブランド担当者との丁寧な対話こそ、長い目で見て成果に繋がると思っています。

 

 

▼インターナルコミュニケーションが重要なのですね。一方で、お客様であるECサイトのお客様に対しては、どのような方針をお持ちですか?

こちらでもポイントは、丁寧にやることです。当社サイトのメインとなるお客様は35~45歳の層で、比較的高年齢の方も多いのが特徴です。ITに関するリテラシーがあまりない方にも、きちんと理解してもらい、買い終わるまでサポートしなければなりません。

 

ですから、ボタンの大きさなどのUI・UXの改善をしたり、サイト内で使用する用語をレギュレーションで統一したりして、どのブランドでも同じように買い物ができるよう心がけています。カートページの導線をわかりやすくするのも大切です。お客様にとにかく買わせるのではなく、納得したうえで買っていただけるように改善を続けています。

 

当社のブランドは、レディース中心に幅広いニーズに応えられるようになっています。いまはオンライン専用の商品や先行予約対応、アウトレット販売も行っています。多様な商品を、多様なアプローチで販売しているのですから、サイトの基盤部分では、尖ったことをやるのではなく、丁寧に、すべてのお客様に理解してもらえるようなつくりにしなければなりません。

 

ITOKINオンラインストア 商品詳細ページ

ITOKINオンラインストアには、多様なおすすめ商品が並ぶ

 

 

ポップアップとレコメンドの連携で、セット率を更に改善

 ▼イトキンのECのなかで、レコメンドエンジンによるパーソナライゼーションはどのような意味を持ちますか?

サイト内での接客サービスの一環として、お客様に当社の多様な商品に関心を持っていただき、選んでいただくためのツールとして稼働しています。レコメンドを介してお客様のニーズに合った最適な商品をご提案することで、転換率やセット率(一度に購入する商品点数)の向上が実現できるものと考えています。

 

現在使っているシルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドエンジン、アイジェント・レコメンダーは、2017年のサイトリニューアルに合わせて導入しました。当時の当社ECサイトは、顧客視点でまだまだ弱いところが多くありました。それらの課題をきちんと改善し、使いやすい=売れるサイトにするために、レコメンド機能の強化も当然行わなければならないと判断しました。

 

サイト解析の結果から、ある商品ページから別の商品ページに移動する際に、お客様が離脱してしまう傾向が強いことが見えており、大きな課題として捉えていました。これはブランドが多岐にわたるモールサイト故の傾向かもしれません。レコメンドエンジンを活用すれば、アイテムの詳細ページから直接別のアイテムへのリンクを作ることができますから、離脱率を改善し、お客様にスムーズな商品探しを体験してもらえると考えました。

 

▼シルバーエッグのレコメンドエンジンで、どのような点が改善できたでしょうか?

まず基本的なことですが、以前のレコメンドエンジンと違い、レコメンドによる成果の可視化が、きちんとできるようになりました。シルバーエッグのポータルページでクロスセル、アップセルへの貢献度がトラッキングできるようになり、両面で確かに成果を出せていると確認できています。

 

レコメンドを利用(クリック)したお客様のセット率は確実に上がっていますので、ちゃんとお客様に必要なものを提案できているのだと思っています。

 

また、ユーザー導線の面でも、顧客がいちいち一覧ページに戻らずに次の商品を見ることができるようになりました。回遊率、離脱率も少しずつ改善していると感じます。

 

▼これは成功した! と言えるレコメンドの活用法はありますか?

シルバーエッグのコンサルタントから提案されたのですが、お客様が商品をカートに投入したタイミングで、ポップアップで別の商品をレコメンドする方法が非常に成果を生んでいます。もう1点欲しいものが、サイト内で目につきやすくなるためだと思います。現在利用しているECパッケージとの連携で実現したソリューションですが、やってよかったです。

 

 

メールからの売上に再注目

▼今後のイトキンECサービスを、どのように成長させてゆくのでしょうか?

新型コロナウイルスによるパンデミックで、百貨店を中心としたリアルビジネスは苦戦しています。一方で、EC化率は大きく伸び、事業単体で見ればこの5年右肩上がりでの成長を続けています。今後も変化し続ける社会情勢や、それによるお客様の多様な消費行動の変化に合わせて、より1人1人に合わせたご提案が必要になってくると思います。

 

それを実現する手段として、様々なツールを強化しており、プッシュ通知やSNS、チャット接客といった新たな販促ツール経由の売上は日に日に増してきています。そんな中で依然堅調なのが、実はEメールです。

 

良いものはもっと伸ばしたいと思うのですが、Eメールに関してはいたずらにメルマガの本数を増やしたりするのではなく、中身のクオリティを上げて、お客様により信頼されるものにしていこうと考えています。MAを活用し、お客様の態度変容を意識したメールコンテンツの作り込みを行っていますが、レコメンドエンジンを組み合わせて活用したメールのパーソナライズ化も、検討材料の一つです。シルバーエッグには、より活発な提案を続けてほしいですね。

 

 

(取材 / 編集:園田 真悟)



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