レコメンドの仕組みと効果|売上・コンバージョンを向上させる最新活用法
商品に関する情報は膨大で、ユーザーが自分にとって本当にベストな商品や潜在的要求がある商品に出会えることは非常に難しくなっています。
そのため、ECの購買率や客単価を上げるためには、ユーザーが探してる情報や好みな商品を目に付きやすいタイミングや場所に表示し、常にニーズに寄り添ったサイトであることが非常に重要です。
ここでは、そのような顧客体験を実現するための「レコメンドエンジン」について、基本的な仕組みと活用事例、また今後レコメンドエンジンはどのようになっていくのか、解説します。
レコメンドをサイトに導入するのは何のため?
【INDEX】
- レコメンドとは?基本とデジタルマーケティングにおける重要性
- デジタルマーケティングにおける「レコメンド」「レコメンドエンジン」とは?
- なぜレコメンドが重要なのか?
- レコメンドエンジンの仕組みと種類
- 仕組:データドリブンなレコメンドの予測
- 種類:レコメンドの4つのタイプ、それぞれの機能とメリット
- レコメンドの効果: 5つの指標でわかる売上と顧客体験の向上
- 購買率・コンバージョン率の向上
- 客単価・アップセルの向上
- 併売率・クロスセルの向上
- リピート率の向上
- 回遊性・エンゲージメント率の向上
- 実際に使われているレコメンド
- ECサイトにおける商品のレコメンド
- EC以外のサイトでのコンテンツのレコメンド
- 応用: マルチチャネルでのレコメンドの利用
- まとめ: レコメンドの理解が顧客体験向上の鍵
レコメンドとは?基本とデジタルマーケティングにおける重要性
レコメンドという言葉は、何かをおすすめすることを意味します。
名詞形は「レコメンデーション」(recommendation)となります。
この意味では、売れ筋ランキングや新商品といった「売りたい商品」をおすすめすることもこれに当てはまります。
しかしそれでは十分にユーザー自身のニーズに寄り添っているとはいえません。
これに対して、デジタルマーケティングにおける「レコメンド」はしばしば、顧客自身が探している可能性が高い商品をおすすめすることを表します。
デジタルマーケティングにおける「レコメンド」「レコメンドエンジン」とは?
デジタルマーケティングにおいては、ユーザーのニーズに合わせて商品やコンテンツをサイトやアプリ上に表示する機能のことを「レコメンド」と呼びます。
「レコメンドエンジン」とは、そのようなレコメンドの機能を動かしているもので、「レコメンドシステム」「自動推薦システム」などと呼ばれることもあります。
ユーザーの好みやニーズは常に変化するため、レコメンドエンジンが表示する商品は、動的に変化します。
レコメンドエンジンは、ユーザーの嗜好やマイクロニーズを分析し、それに基づきユーザー一人ひとりの興味・関心がありそうな情報(商品やコンテンツ)を選出、個別のユーザーに提供するのです。
なぜレコメンドが重要なのか?
ECサイトのようにコンバージョンを意図したサイトは、ある程度の規模であればレコメンドエンジンを導入しています。レコメンドを導入する意義は何でしょうか? 売上やコンバージョンのアップだけなのでしょうか?
デジタルマーケティングにおいてレコメンドエンジンが重要な理由は2つあります。
1. 売上やコンバージョンを上げる
サイト事業者がレコメンドを導入したり精度の高いものにリプレースするのは、売上やコンバージョンを向上させるためです。
レコメンドがどれぐらい売上に貢献するかと言うと、たとえばAmazonの売上におけるレコメンドの直接的ないし間接的な売上の割合は1/3に上ると言われています [1]。
また、シルバーエッグ・テクノロジーの「アイジェント・レコメンダー」の場合ですと、平均購買点数は1.49倍、コンバージョン率1.79倍、平均PV数2倍という結果が出ています 。
「売上を伸ばしたければレコメンドを見直すべし」ということです。
2. 顧客体験を向上しブランドへの信頼を築く
一時的な売上の向上だけがレコメンドの役割であるかというと、そうではありません。
レコメンドのもう一つの目的は、「ユーザーとの信頼を築くこと」にあります。
なぜレコメンドがユーザーとの信頼を築くかというと、ユーザーが能動的に欲しいと思う商品にアクセスしやすくなるからです
ベストセラーやシーズンに合わせた実用書ばかり目立ち、その他の書籍は自分で検索しなければならない書籍の販売サイトと、サイトのいたるところに「あなたへのおすすめ」があり、いちいち自分で探さなくても、欲しい商品が次々と表示されるサイトがあるとします。
ユーザーはどちらのサイトに価値を感じるでしょうか?
当然、後者であれば欲しい物がすぐに見つかるため利便性や親近感を感じるようになるでしょう。
ベストセラーやシーズンに合わせた実用書は、短期的に売上を立てるのに重要なアイテムです。
しかし、他人から見て多少マニアックなものでも、ある人にとっては本当に欲しいものということもあります。
ライフスタイルや価値観の多様化によって、ただ売り手側都合でモノを売るのではなく、顧客が本当に欲しいものにアクセスできる手助けがますます重要になりました。
予測精度の高い「あなたへのおすすめ」は長期的な顧客生涯価値(LTV)を高めることにもなるのです。
アパレルショップやデパート業界でよく言われることですが、優秀な店員は「売ろうとしない」で顧客の立場に立ってよく話を聞くことが重要です。
彼らが優秀なのは、そのような誠実な態度から、結果として売上もついてくるためです。逆に店員の「売りたい」という思いが前面に出てしまい、「自分の話を聞いてくれない」と感じると、顧客はそのお店を利用したくないと感じるでしょう。
接客をめぐるこうした顧客心理は、ECでも同じです。
単に商品を押し付けるのではなく、顧客一人ひとりのニーズをよく見極め、提案することで、結果的に売上を上げるのがレコメンドです。
レコメンドエンジンは、AIを含めた複数のアルゴリズムで、顧客のそれまでの購入履歴や閲覧履歴といった行動情報を分析することでこれを実現します。
レコメンドと実店舗の接客コミュニケーションの目的には重要な共通点があります
レコメンドエンジンの仕組みと種類
レコメンドエンジンの分析や判断は、人間の主観的な記憶によるものではなくデータドリブンなものです。
AIがデータに基づき傾向を分析・予測し、しかもその提案は、店員にひけをとらないレベルに人間的で気の利いた新鮮なものであることも少なくありません。
十分なデータを学習したAI型のレコメンドエンジンは、人間の感情を直接汲み取ることはできませんが、収集したデータの中に隠された人間の情動を暗に反映し、提案を行うことができるようになってきます。
仕組み: データドリブンなレコメンドの予測
レコメンドエンジンは、ユーザーに対してどのように商品や情報の提案を行うのでしょうか?
レコメンドが顧客の嗜好やニーズを判断する材料は複合的です。
具体的には、以下のようなデータを基に複合的に情報を判断します。
- 商品の購入履歴や閲覧履歴と、その傾向
- 顧客自身が明示する嗜好(アンケートや閲覧ページなどから判断)
- 同じ傾向を持つ他の顧客の興味対象
- 顧客のプロフィールやその他の情報
これらは、オンラインショップに登録された顧客情報、データベースサーバに保管される行動情報、ブラウザに一時的に保管されるCookie情報などです。どの内容をどのように組み合わせて使用するかは、レコメンドエンジンによって異なります。
種類: レコメンドの4つのタイプ、それぞれの機能とメリット
レコメンドの機能を導入するには、サイト運営者が自社で開発する場合もあれば、ツールやサービスとして製品化されたものを導入する場合もあります。いずれの場合も、レコメンドエンジンのベースとなる技術にはいくつかの種類があり、それらを組み合わせて使っている場合がほとんどです。
ここでは、レコメンドエンジンの基本的な種類を4つ紹介します。
1. ルールベース
ルールベースレコメンドとは、あらかめ設定されたルールに基づき、ユーザーにおすすめの商品やコンテンツを提示する手法です。
例えば、「過去に購入した商品と関連性の高い商品を表示」「特定の商品を閲覧したユーザーに、別の関連商品を表示」「特定の属性(年齢、性別、地域など)を持つユーザーに、関連性の高い商品を表示」といったルールを設定できます。
たとえばカートに入っているトップスに対して、同じ生地のボトムスを表示してセットアップを促したり、地域別のセグメントに応じて特定の地域で人気のキャラクターを表示させるといった方法があります。
ルールベースのレコメンドのメリットは、単純で導入しやすく、特定のキャンペーンやイベントに合わせたり、担当者のノウハウを活かしたレコメンドが可能な点にあります。
ただし、ルールの設定には人的なリソースがかかります。また、ユーザーの嗜好が多様化したり、データ量が少ないと効果を発揮しにくいというデメリットもあります。
ルールベースレコメンドは、他のレコメンド手法と組み合わせることで、より効果的なレコメンドを実現できます。
2. コンテンツベース
コンテンツベースないしアイテムベースのレコメンドは、ユーザーの過去の行動履歴と、コンテンツ(商品)の属性情報(カテゴリ、ジャンル、キーワード、特徴など)を分析し、ユーザーが過去に好んだコンテンツと類似性の高いコンテンツをおすすめします。
例えば、あるアクション映画を見たユーザーの場合、90年代のアクション映画が好き、その映画に出演した俳優が好きなどと好みが分析されます。それに基づき90年代の別のアクション映画や、同じ俳優が出演している別の映画がおすすめされるようになります。
コンテンツベースのレコメンドはルールベースのように、ルールを設定する必要はありません。
ユーザーの嗜好が明確であれば、高い精度でレコメンドでき、他のユーザーの行動履歴に依存しないため、ユーザー数が少ない場合でも利用できます。
一方で、ユーザーの嗜好が多様化すると精度が下がってきます。また、ユーザーが過去に観たことのない新しいジャンルを提示するのが難しいため、常に同じようなコンテンツがおすすめされる傾向があります。
コンテンツベースレコメンドは、他のレコメンド手法と組み合わせることで、より効果的なレコメンドを実現できます。
3. 協調フィルタリング
協調フィルタリングは、レコメンデーションにおけるもっともポピュラーな技術です。「Aという商品を閲覧・購入した人はBという商品も閲覧・購入した人が多いため、Aという商品を閲覧・購入した人にはBという商品を薦める」といったように、ユーザーのWebサイトへのアクセス履歴やその他の行動履歴に基づいて商品をレコメンドする手法です。その最大の特長は商品情報のようなコンテンツの分析を必要とせず、それを上回るレコメンド精度を出せるという点です。
協調フィルタリングを用いる利点は多いです。一つには、「思いがけない商品の発見」(セレンディピティ *)という新鮮な体験をユーザーに与えることができることがあります。
自分の嗜好と似た人が見た商品は、これまで見たことのなかった商品であっても、自分の嗜好とマッチする可能性が高いはずです。このため、協調フィルタリングによっておすすめされる商品は、自分が出会ったことのない初めて知る商品であるにもかかわらず、まさに自分にぴったりだと思えることが少なくありません。
また、自動でデータを収集して分析するため、一度導入してしまえば市場の変化にも自動的に対応し、その時々で最適な提案が行えます。リソースがかかりにくく導入しやすいこともメリットといえます。
一方で、協調フィルタリングには課題もあります。たとえば、導入初期などでデータが少ない場合には、有効なレコメンドをしにくいという問題で、「コールドスタート」(**)と呼ばれています。ユーザーの行動情報が十分に温まっていない「コールドな」状態では、レコメンドを行うのに十分なデータの蓄積がないため、適切な判断や予測を実行することが困難なのです。
しかし、この「コールドスタート」という課題を解決するために多くのテクニックが生み出されており、協調フィルタリングは現在でもなお、レコメンドの根幹をなす技術として応用されています。
* 「セレンディピティ・マーケティングとは? ECにおける3つの実行ポイント」
** コールドスタートの解決方法については 「 AIに「温故知新」ができないとき – ビジネスの現場における、コールドスタート問題の解決策」で詳しく解説しています。
4. AIレコメンド
AIレコメンドは、AIを活用してユーザー一人ひとりに最適な商品やコンテンツをおすすめするシステムです。
従来のレコメンドシステムと比較して、より高度なパーソナライズと精度の高い予測を可能にします。
協調フィルタリングとの違いは、機械学習や深層学習などのAI技術を用い、ユーザーの行動履歴だけでなく、属性情報、コンテンツの属性情報、コンテキストなど、より多角的なデータを分析する点にあります。
協調フィルタリングもAIレコメンドの一つではありますが、近年のAIレコメンドでは、コンテンツベースやルールベースなど、他の手法をハイブリッドし利用することができます。
したがって、行動情報のみに依存するわけではないため、ユーザーが少ない場合や新商品のように行動情報が十分に蓄積されていなくても高精度なパーソナライゼーションでおすすめすることができます。
レコメンドの効果: 5つの指標でわかる売上と顧客体験の向上
購買率・コンバージョン率の向上
ECサイトにおいて売り上げに直結する重要なコンバージョン、購買率とは、サイトを訪問したユーザーの中で、そのサイトで商品を購入した人の割合です。
購入ボタンをクリックしてカートに商品を入れ、決済が完了することで達成されるます。
EC以外の求人サイトや不動産サイトの場合は、求人の応募率や資料請求のコンバージョンです。
レコメンドの表示が適切だと、ユーザーのニーズに合った商品が表示されるため、コンバージョン率が高くなります。
客単価・アップセルの向上
客単価とは、一回の購入あたりで顧客が支払う平均額で、「売上 ÷ 客数」で求められます。
顧客は面倒なサイトや信頼の低いショップで高額な支払いをしたくはないので、客単価を上げるためには、ブランドの信頼性、サイトのUI、顧客体験(CX)に配慮する必要があります。
パーソナライゼーション機能が優れたサイトでは、商品が見つけやすく、しかも自分の好みの商品が揃っていることを顧客に印象づけます。買い物が便利で楽しくなるため、客単価が向上します。
アップセルとは、顧客により上位の高額商品を購入してもらうことで、客単価を向上させるための重要な要因です。
レコメンドは次の理由でアップセルに効果的です。
- 高額商品の場合、ユーザーは単に売れ筋を衝動的に買うようも、自分に合ったものをじっくり探す傾向がある
- 予算で区切られたフィルタによる検索機能だけでは、上位価格帯の商品が表示されない
じっくりと商品を比較検討したい場合、パーソナライズに優れたレコメンド表示があると、ユーザーは自分の好みの商品同士をじっくりと比較検討しやすくなります。
また、例えば予算10万円でソファを探していたとして、12万円でもう少し上質な素材のユーザーの好みに合ったソファが買えるとします。レコメンドはこうした検索では見つけられない高額商品を見つけやすくします。
このような顧客体験の向上により、レコメンドはアップセルを促し客単価を向上させる効果があります。
併売率・クロスセルの向上
クロスセル(合わせ買い)とは顧客が購入しようとしている商品といっしょに、別の商品を購入することです。
併売率は、たとえば全体の購入者数に対して一度に複数商品を購入した人の割合として算出され、クロスセルを測る指標となっています。
アップセル同様、クロスセルも客単価向上のための重要な要素です。
よくあるクロスセル施策には「2点まとめ買いで10%OFF」といったクーポン施策があります。
しかしこのようにディスカウントをしなくとも、レコメンドはクロスセルを自然に向上させることができます。
セット商品や関連商品を表示するレコメンドは、ユーザーの購買意欲を刺激するのに非常に有効です。
とくに目的買いが多いサイトで併売率が上げたいならば、ユーザーが決済ボタンを押すまでの各タイミングで、最適な「これも欲しい」と思える商品をレコメンドするこが効果的です。
例えばワインをカートに入れたら、それに合う生ハムやチーズを関連商品として表示すれば、同時購入される可能性は高まります。
また、このレコメンドがAIパーソナライゼーションによる高度なものならば、さらにその確度は高まります。
例えばそのユーザーがチーズの産地や種類にもこだわりがある場合には、そうした傾向を反映することで、いっそう効果的にクロスセルを高めることができます。
リピート率の向上
リピート率とは顧客がリピーターになる割合で、「特定期間のリピート顧客数÷ 特定期間の総顧客数」もしくは「特定期間のリピート顧客数÷ 累計新規顧客数」によって求められます。
リピーターは前回の購入に満足しておりブランドに信頼を持っているため、新規顧客よりも購買頻度や購買単価が高い傾向があります。
リピート率を向上させるためには、メールやSNSによる顧客との関係性強化が重要ですが、こうしたチャネルの一つ一つをパーソナライズし、いつでもユーザーのニーズを満たしていることも重要です。
LINEやメールの内容が画一的でクーポンの配布のみでは、再訪の同期にはなりません。ユーザー目線で欲しい商品があるとということが重要です。
CRMに付随するメール配信機能ではレコメンドの機能がなかったり、あっても不十分なことが少なくありません。
レコメンドメールサービス「アイジェント・レコガゾウ」はLINEやメールで顧客の嗜好やライフスタイルにマッチしたレコメンドをすることができ、メール経由の購買率が1.8~3倍という結果が出ています。
回遊性・エンゲージメント率の向上
回遊性とはユーザーがページや商品を閲覧する高さ指標で、一回のセッションあたりのページビュー数で表されます。
またエンゲージメント率とは、ユーザーがどれだけ積極的にサイトを利用しているかを測る指標で、ページビューやスクロール、コンバージョンなどのイベントを総合的に表します。エンゲージメント率が低いと直帰率が高い(つまり何のアクションもないままサイトを閉じたユーザーが多い)ということになります。
レコメンドはユーザーの関心を引く商品を多く提示するため回遊性を促進します。
商品詳細やレビューブログ、コーディネートの閲覧数はユーザーの購買意欲に比例するため、回遊性やエンゲージメント率はECの売上を支える重要な指標と言えます。
実際に使われているレコメンド
レコメンドは、ECサイトはもちろん、求人や不動産の紹介、記事コンテンツを中心とした情報サイトなど、幅広い業種やジャンルで効果を発揮することができます。WEB販売やプロモーションを行うサイトであれば、レコメンドを活用してさらなるビジネスチャンスを広げることも十分に見込めます。
ECサイトにおける商品のレコメンド
ECサイトでのレコメンデーションでは、ややもすると転換率や売上アップだけが注目されやすいですが、すでにお話しした通り、実はショッピングをする上での利便性の向上が大切なポイントとなります。
これは非常に単純なアイテムベースのコンテンツ・フィルタリングの例ですが、たとえば、本やCDの場合で考えてみると、ある著者・作者が好きなユーザーが、その著者・作者の別の作品も好きであるということはごく当たり前のことです。現在Aという作品の1巻を見ている人にその作品の2巻以降をレコメンド表示することで、2巻以降を探す手間が省け、ユーザーの立場としては非常に買い物がしやすくなるというメリットがあります。
より精度の高いレコメンドでは、協調フィルタリングにより同じ好みの人々の集合的な情報を利用することができます。同じ本を読んだ人の好みの傾向から、たんに同じ作家の小説だけでなく、似たスタイルの小説や同時代の作家の小説も提案対象とすることができます。すると、自分の好みと一致しているが自力ではなかなか見つけることのできないような小説も見つけることができるようになります。
EC以外のサイトでのコンテンツのレコメンド
EC以外でも、メディアサイトや人材、不動産、旅行などを扱うサイトでもレコメンドは有効です。ニュースや情報を扱うメディアサイトであれば、閲覧数やサイト滞在時間を高めることができます。求人や不動産のサイトであれば、ユーザーにあった求人や物件の情報を複数見せることで、マッチングの精度が上がります。
ユーザーは検索するためのキーワードやフィルタに頭を悩ませなくとも欲しい情報を見つけやすくなるため、必要な情報にたどり着くまでの導線は簡略化されますが、同時に他の見たい情報も目につきやすくなり、結果として回遊性は上がります。求人や不動産といった案件を扱うサイトでは、ユーザーが考える条件に一致しない案件はいくら似た傾向をもつユーザーが閲覧していても、検討の対象外ということがあるでしょう。
もちろん洋服や小物のようなアイテムでもそういったことはありますが、仕事や住まいのようにライフスタイルとより密接に関わる案件を推薦する場合、顧客にとって「ゆずれない条件」というものがいっそうはっきりとしており、このことに配慮する必要があります。たとえば、週に3日しか仕事ができないという人にとっては、いくら他の条件が似ていても、週5の案件は週3で自宅からより遠い勤務先の仕事よりも見込みのないものです。レコメンドエンジンがコンテンツを提案するとき、どういった条件に重点を置くかといったカスタマイズも必要になってきます。
EC以外のサイトでレコメンドを導入する場合には、カスタマイズのしやすさや、そのためのコンサルティングの充実も重要になってきます。
応用: マルチチャネルでのレコメンドの利用
ECにせよその他のサービスにせよ、スマートフォンの普及によりWebサイト以外からのコンバージョンがいっそう大きな割合を占めるようになりました。ユーザーとのコミュニケーションが密なメールやアプリといったチャネルでもレコメンド機能を利用すれば、さらなる効果が期待できます。
たとえば、メルマガにレコメンド商品の画像を掲載することができれば、画一的なキャンペーンを送るよりも広告的な印象は薄れ、ユーザーの信頼感は上がるはずです。もともと自分が探している情報や商品に似た内容が、わざわざサイトを訪問していなくてもメールで届けられるわけですから、むしろ便利だと感じられる場合もあるでしょう。
実際、メールやアプリでのレコメンドは非常に効果的です。配信頻度や在庫切れの問題をクリアすれば、取り組んでみる価値は十分にあります。
マルチチャネルでのレコメンドは、利用しているCRMなどの環境によっては難しい場合もありますが、思いのほか簡単に実装できたというケースも少なくありません。もしWebサイト以外でのコンバージョンアップが課題ならば、レコメンドのシステム開発者やベンダーに一度相談してみるのが良いでしょう。
まとめ: レコメンドの理解が顧客体験向上の鍵
レコメンドの目的は顧客のサポートであり、顧客ロイヤリティの向上でですが、サイトのコンバージョンや売上に対して大きく貢献します。
注意しなければならないのは、レコメンドにはいくつかのタイプがあり、それによって機能的な違いがあるということです。
現在ではAIレコメンドがもっとも精度の高いパーソナライゼーションを実現できますが、それだけにコストが高い傾向があります。
レコメンドの効果としては、購買率、客単価、リピート率、回遊性の向上など、売上と直接結びつく指標の向上が挙げられます。
レコメンドはECサイトはもちろん、無形商材やサブスクリプション、契約サービスの提供、メディアなど多岐にわたるオンラインサービスで効果を上げることができます。他方で、機能のチューニングや表示のカスタマイズが必要なケースもあり、開発/導入時には開発者やコンサルタントとのコミュニケーションも重要です。
レコメンドを最適化すれば、ユーザーは欲しい情報をサイト上で見つけやすくなるため、「好みの情報が多くて楽しいサイト」「探しやすく便利なサイト」と認識するようになります。
最後に、本文中でもご紹介したAIレコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー」の詳しいサービス資料もご用意しております。ぜひダウンロードいただき、サイトの顧客体験改善にお役立てください。
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レファレンス
[1] マイケル・シュレージ『レコメンダ・システムのすべて』, ニュートン新書, 2023, p. 46.
[2] 同上, p. 51.