OMO活性化のためにやっておきたい「レコメンド機能」と「POSデータ」連携法
PC・スマートフォンの普及に伴って、オンラインビジネスの重要性が増して便利に買い物をすることが当たり前となったデジタル時代。実店舗を持つ企業はECサイトの運用も欠かせなくなっています。そこで、実店舗とECサイトの両方を運用する企業が考えるべきマーケティング手法は「OMO」です。
消費者がオンライン(ECサイト)とオフライン(実店舗)どちらの環境でも買い物を楽しんでもらえるためには、OMO戦略の一環としてPOSシステムを使ったオンラインとオフラインでの情報連携が必要不可欠となっています。
さらに、情報連携をしたうえで消費者一人ひとりに合った「おすすめ商品」の提案をすることで、ECサイトでも実店舗と同様な接客体験を実感してもらうことが可能となります。
今回は、シルバーエッグ・テクノロジーのコンサルタントの提案や経験を基に、OMO戦略を実現するために重要となるPOSシステムの仕組みや活用方法、そしてそれらと連携できるパーソナライズしたレコメンド機能について紹介いたします。
【INDEX】
・パーソナライズ化されたレコメンド機能連携で得られる、消費者のメリット
・アパレル事例:売上1.5倍!オンラインだけじゃない、実店舗の売上向上
・「人材」「旅行」業界向け:OMO実現のためにレコメンド機能でできること
・まとめ
背景:OMOの重要性と企業が持つ課題
「OMO」とは「Online Merges With Offline」の略称であり、「オンラインとオフラインの融合」を意味します。具体的には、ECなどのデジタルサービスと実店舗でのサービスを、データの統合・相互利用によって一元的なものとし、オンラインとオフラインの垣根を越えて、ユーザー(消費者)の購買体験を向上させてゆくマーケティングの考え方を指します。
コロナ禍の影響であらゆる世代でECの利用率が向上した結果、オンラインとオフラインの2つの環境の差を意識せずにブランドと接する傾向は、これまでになく高まっています。店舗でチェックした商品をECで購入するユーザー行動が顕著になり、またECで購入したものを店舗で受け取るBOPIS(ボピス)という仕組みも普及しつつあります。ユーザーは企業に対し、オンラインとオフラインで統一されたサービスを求めるようになっています。
ユーザーの求めるOMOを実現するためには、ECサイトと実店舗それぞれから取得したユーザーの情報を互いに共有し、データドリブンな手法で、環境を問わない高品質な「接客体験」を作り上げなければなりません。例えば、店舗でチェックした商品の情報がECサイトにも引き継がれたり、ECサイトでも実店舗でも同じキャンペーンによるメリットを享受できたりといった、オンラインとオフラインを「一つのお店」として体験できる環境作りが重要です。
ECサイト×実店舗の第一歩、POSデータの活用
OMO施策を立ち上げる際に、「こんな企画があるので、こんなデータを使いたい」という方法論だと、データ収集の手法がネックとなり、実現に至らないという例が多くみられます。OMO推進の成功のポイントは、「ありもののデータを使って、有効な施策を考えよう」という方法論です。そこで鍵となるのが、「POSデータ」です。
実店舗でのユーザーの購買行動は、一般的にPOSシステムがデータとして収集し、管理しています。「会員アプリ」(かつての会員カード)を用意している実店舗ビジネスは多いと思いますが、この会員ID情報をPOSデータに付加することで「誰が・いつ・どの店舗で・何を購入したか」という情報が明らかになります。さらに、実店舗の会員IDと、ECサイトのユーザーIDの紐づけを行えば、オンライン・オフラインでの購買履歴や閲覧履歴を一元化し、相互で同一のサービスを展開することができるようになります。
では、一元化されたユーザーの購買履歴を活用し、具体的にどのようなOMO施策が可能になるのでしょうか?一例としてあげたいのが、行動情報をベースとした「レコメンド機能」のOMO展開です。
実店舗で買い物をする際に、消費者が店内で見ている商品を観察して、販売員がその人の好みに合う商品を推奨することはよくあります。シルバーエッグ・テクノロジーが提供する「アイジェント・レコメンダー」は、この実店舗での販売員の働きを参考に、「ECでの閲覧・購買履歴から、ユーザーに合った商品をAIが推奨する」という機能を実現しています。販売員がいないECサイトでも、AIが代わりに分析と予測をし、自動的に商品を推奨(レコメンド)することができるのです。
しかし、通常このアイジェント・レコメンダーの機能はECのみに限定されます。AIが分析するデータが多ければ多いほど、精度の高い予測が可能になりますが、実店舗での購買履歴が入手できないため、レコメンドの体験はオンラインに限られてしまっています。
この課題を解決するため、シルバーエッグ・テクノロジーでは、POSデータからの情報をアイジェント・レコメンダーに付加する「POS連携オプション」を提供しています*。
実店舗のPOSデータをECのデータと統合し、ユーザーがオンラインとオフライン双方でとった行動を一元的に分析・予測することができれば、レコメンドの精度はさらに高まります。店舗で購入した商品にマッチする商品をECでおすすめするなど、オンラインとオフラインの垣根を超えた高品質な商品提案が実現でき、OMO戦略を活性化することができるのです。
*POS連携オプションには、オンライン・オフラインでの会員IDの統合が必須となります。
パーソナライズ化されたレコメンド機能との連携で得られる、消費者のメリット
POS連携レコメンドで実現する、実店舗とネットショップを横断したOne to Oneのレコメンドは、ショッピングの「利便性」と「楽しさ」の両方を引き上げる効果があります。
ECでのパーソナライズされた商品提案の精度が高まることはもちろんですが、ほかにも、POSに加え店舗の在庫情報も連携し、店舗用の会員アプリを介したレコメンドを応用すれば、来店体験がよりリッチになります。店舗限定セールの商品がパーソナライズされて提案されたり、BOPISでの来店時にその商品にマッチする別の商品がpushされたりなど、ユーザーはオフラインでも、予想外の「自分好みの商品・コンテンツとの出会い」(セレンディピティ)を体験できます。
普段リピート購入する商品であれば、タイミングに合わせて入荷情報をもらうことで「利便性」を実感いただけますし、また好みに合う新しい商品を表示すれば「楽しい買い物」という経験が提供できます。店舗とECサイト双方で、ひとつのブランド体験としてユーザーの好感度を上げてゆくことができるのです。
アパレル事例:売上1.5倍!オンラインだけじゃない、実店舗の売上向上
一方で、企業側として得られるメリットは、「店舗の売上をECが奪う」といった従来のオンラインvsオフラインの構造から脱却し、「実店舗とECサイト両方が共に売上を上げてゆく」ツールとして、POS連携レコメンドを使うことができることです。
先に述べた通り、POS連携レコメンドは、ECでのレコメンド精度を上げるだけでなく、実店舗への再来店の促進と購買意欲の喚起を図るためのツールとしても有効です。
POS連携レコメンドを導入した大手アパレル企業の事例では、レコメンド付きのpush通知を実施したことで、店舗での購買点数と購買金額を1.5倍向上するという実績が得られています。この企業では、レコメンド有無で実店舗の購入者に対するpush通知の効果を比較したところ、レコメンドを付けることで購買点数と購買金額に15%の上昇効果差を出しています。
push通知を実施すれば店舗への再来店を促すことはできますが、さらにレコメンド機能を加えて消費者の興味を持ってもらえそうな情報を提示することで、より一層、購買意欲を喚起することができます。
このように、オンラインとオフラインとで情報を共有しあい、垣根のないシームレスなパーソナライズ情報を提供することで、店舗、EC双方で売上向上を実現します。
「人材」「旅行」業界向け:OMO実現のためにレコメンド機能でできること
アイジェント・レコメンダーのPOS連携オプションは、実は「POSデータ」に限らず、CSV形式であればさまざまな顧客データを、レコメンドエンジンで活用することができます。
一例として、流通小売とは異なる業界での活用方法を紹介します。
まずは、人材業界での活用方法です。
人材エージェント型のサービスでは、就職・転職を検討しているユーザーがエージェント企業のコンサルタントと直接面談し、ユーザーが求める業種や職種、収入や地域などを伝えたうえで、コンサルタントが適切な求人案件をピックアップして紹介します。
この際に、提案してもらった内容から応募に進んだ求人案件をデータとして記録し、所定の形式でレコメンドエンジンにフィードさせることで、エージェントとの初回のミーティングの直後から*、オンライン上でユーザーが興味のある求人案件をレコメンドとして表示することができます。
コンサルタントの提案から得た応募結果をシームレスに引き継ぐ形で、AIが求人案件のレコメンドを行うことで、ユーザーのサービス利用体験を格段に上げることができます。オンライン/オフライン問わず、すでに応募に進んでいる案件はレコメンドから削除することも可能ですので、同じ案件を何度も提案してユーザーの心証を損なう心配もありません。
もう一つ、旅行業界での活用法を紹介します。
旅行代理店も先の人材エージェントと同じように、ユーザーは店舗でプランナーと相談して、条件のもと旅行の計画やおすすめプランを提案してもらい、その場で予約することができます。ここでの予約内容をデータ化してレコメンドエンジンにフィードし、旅行代理店のサイトやメールを介して追加のプランをパーソナライズして提案することができます。
また、旅行中のオプションプランの提案にも、この手法は有効です。同じ目的地でも、ユーザーによって選択するオプションには「アクティビティ系」や「リラックス系」など、傾向の差がでます。多くのユーザーのオンライン・オフライン双方でのプランの選択傾向をAIが学習することで、ユーザー一人ひとりに適したオプションプランを、旅行前や旅行中でも提案することが可能になります。
さらに、今までに予約した旅行プランや店舗で提案した内容を基に、シーズンごとにメールなどで定期的にプランを提案し、アプローチをかけることも可能となります。
このように、POS連携レコメンドによるOMO戦略は、必ずしも実店舗やECサイトで「買い物体験を向上する」ためだけのものではありません。さまざまな業界で、用途や課題に適した活用が可能になっています。
*エージェント経由で応募した求人をデータ化し、バッチでレコメンドエンジンにフィードさせるためのシステム構築が必要となります。処理にかかるリードタイムを考慮する必要があります。
まとめ
ここまでOMO戦略を進めるための第一歩として、POSデータと連携したレコメンドエンジンの活用メリットを解説しました。
実店舗とECサイト双方でのサービス品質の一元化が求められる一方、個人が求める商品やサービスの内容は多様化しています。OMO実現のためにまったく新しいシステムを構築するのではなく、「POSデータ」と「レコメンドエンジン」というすでにある技術を組み合わせ、簡単に、OMO施策を始めることでその効果が実感できます。
当社のコンサルタントが、業界やビジネスモデルに応じた最適なOMO戦略を一緒に検討し、レコメンド×POS連携の効果の最大化をお手伝いいたします。ぜひご相談ください。
(取材 / 編集:矢野 アマンダ有梨)