ネガティブな顧客マインドをポジティブに変える、カゴ落ちメールコンテンツ
ECの世界では、「カゴ落ちメール」の有用性は広く知られています。多くのECプラットフォームが提供するこの機能は、CVR向上の効果が認められる一方、顧客のネガティブな反応を引き起こすこともあると言われています。今回はAIを活用して「カゴ落ちメール」のコンテンツを改善し、顧客の忌避感を低減するとともにCVRの更なる向上を実現する方法を考えていきます。
【Index】
・カゴ落ちメールの有効性と、質的な課題
・ユーザーに嫌われない「カゴ落ちメール」とは?
・“選ぶ自由”こそ、ユーザーの求める体験
・“送料が高くて買うのを止めた”問題の解決
▼カゴ落ちメールの有効性と、質的な課題
商品をカートに入れたのに、決済の前で購入をやめてしまう「カゴ落ち(カート放棄)」は、ECサイト担当者の大きな課題です。平均で5~7割とも言われるカート放棄率を少しでも下げるために、ECプラットフォーマーやメール事業者は「カゴ落ちメール」という仕組みを提供しています。
カートに入ったまま購入されていない商品(あるいはキャンセルされた商品)があることを検知し、適当なタイミングでユーザーにそのことを伝える「カゴ落ちメール」は、「カートリマインドメール」や「リターゲティングメール」とも呼ばれ、通常のメルマガに比べ数十倍ものコンバージョンを生み出す有効な施策として知られています。
しかし、そのカゴ落ちメールも、消費者からは意外と不評だったりします。当社に寄せられたエンドユーザーの声をピックアップすると、「買わないと決めた商品を何度も押し付けられ、ウザい」とか、「監視されている感じが気持ち悪い」といった情緒的な反応が多くみられるようです。
そういった声があるからといって、カゴ落ちメールを止める理由はありません。カゴ落ちメールの有効性は、さまざまなデータが充分に示しています。近年ではサードパーティクッキーを使ったユーザー監視技術に基づく「リターゲティング広告」へのネガティブな反応があるケースも増えています。まったく異なる技術とはいえ、同じく「リターゲティング」体験をユーザーにもたらしているカゴ落ちメールも、その有効性が徐々に落ちてゆく可能性があります。
▼ユーザーに嫌われない「カゴ落ちメール」とは?
「監視されている」とか「押し付けがましい」といったネガティブな反応を緩和させるカゴ落ちメールをつくるには、どうしたらよいのでしょうか?
シンプルな方法があります。カゴ落ちした商品情報“だけ”を、メールで送りつけるのをやめることです。カゴ落ち商品に加え、それ以外の商品やコンテンツもメールに盛り込むことで、情報の押し付けとなることを回避し、「新しい選択肢が得られた」という体験をユーザーにもたらすことができます。
しかし、単に「別の商品も一緒に紹介しよう」といっても、ユーザーの関心とはかけ離れた商品を押し付けることになっては、意味がありません。そこで求められるのが、AIを使ったユーザーの嗜好分析です。
カゴ落ちされてしまった商品を含む、サイト内での商品閲覧の情報を分析し、ユーザーと親和性の高い商品を選んで掲載することで、ユーザーは「よりよい選択肢を得られた」と感じる可能性が高まります。
▼“選ぶ自由”こそ、ユーザーの求める体験
シルバーエッグ・テクノロジーは、パーソナライズされたレコメンドコンテンツをEmailで送信できるレコメンドメールサービス『レコガゾウ』を提供しています。メールコンテンツ文中に専用のHTMLタグを挿入するだけで、ECサイト上でのレコメンドと同じように、AIがパーソナライズした商品やコンテンツを本文中に画像で表示させることができます。
この仕組みをカゴ落ちメールのプログラムにも組み込むことで、メール担当者の作業量を増やすことなく、ユーザー体験を向上させることが可能になります。カゴ落ち商品のリマインドだけでなく、買わなかった商品に似た「自分の趣味に合う」商品や、買わなかった商品と組み合わせて使える商品をユーザーに提案することができ、購買意欲を再び高められるのです。
カゴ落ちメールに限らず、デジタルマーケティングのあらゆる局面で、ユーザーは商品の押し付けを嫌います。AIベースのレコメンドエンジン活用のポイントは、ユーザーの嗜好に合わせて商品を“複数”提案し、商品の最終的な選択をユーザーに委ねることにあります。メールレコメンドの仕組みを活用すれば、カゴ落ちメールを新たな商品選択の場にすることができるでしょう。
▼“送料が高くて買うのをやめた”問題の解決
最後に、カゴ落ちメール+レコメンドエンジンの活用Tipsをお伝えします。
レコメンドメールサービス『レコガゾウ』は、Web用のレコメンドサービス『アイジェント・レコメンダー』と同じく、掲載するレコメンド商品を価格帯でフィルタリングすることが可能です。
ユーザーがカート放棄をする主要な要因のひとつに、「意外と送料が高かったため」というものがありますが、特定の価格帯の商品だけをレコメンド表示することで、カゴ落ち商品と合算で送料無料となる価格帯まで購買単価を引き上げる提案をすることができます。
例えば、送料のために買うのをためらっていた服とよくマッチするアクセサリーなどを提案し、かつ送料が無料になるとわかれば、購入のハードルはぐっと下がります。「カゴ落ちメール+レコメンドエンジン」の仕組みを活用し、ぜひ試してみてください。
(文責:園田真悟)