デジタル時代のマーケターに「今、読んでほしい」書籍5選
この20年、企業のマーケティングはデジタル・ソリューションによって進化し続けてきました。ビジネスを駆動するために必要なのは、信念や行動力ではなく、精緻化されたデータとプログラムとなったと言っても、過言ではないでしょう。
しかし、それがすべてなのでしょうか? 私たちシルバーエッグ・テクノロジーは「パーソナライゼーション」という領域でアルゴリズムによるマーケティングを提供していますが、そのユーザーである企業のマーケターの皆さんには、より高く、俯瞰的な視点で、当社のテクノロジーの意義やメリットを理解していただきたいと考えています。それが、当社のサービスのパフォーマンスを最大化することに繋がり、また新しいAI技術の活路を生み出すと信じているからです。
今回は、シルバーエッグのCMOがこれからのマーケティングのために「今だから読む価値がある」と考えている本を紹介します。目先の数値管理を超え、より幅広いマーケティングを理解し、推進するために、ご活用ください。
シルバーエッグ・テクノロジー株式会社
CMO 兼 マーケティング部長
倉石 英典
私はこれまで20年にわたり、内資、外資のIT企業でマーケティングを担当してきましたが、その役割は時代に応じて変化しつづけてきたと実感しています。かつて、マーケティングに求められていた役割は、市場に求められる商品を見出すこと、その商品の価値を世の中に伝えるというハイレベルな目標のもと、販売促進策を提供することでした。
その主な活動内容は広報、宣伝であったり、店頭やサイトでのキャンペーンの企画、推進であったりしました。BtoC、BtoBを問わず、商品ジャンルごと、もしくは個々の商品ごとにマーケターが付き、こういった様々な活動を一貫して担当していることが多かったです。
今日では、マーケティングの要素、効果はより細部に渡り数値化され、ブランド、コミュニケーション、オフラインプロモーション、デジタルなど活動が細分化され専門性を求められるようになりました。一方で例えばデジタルマーケティングの数値管理は専門だが、商品プロモーションについては全く知らないというような縦割りのマーケターが増えつつあります。
今回ご紹介するのは、カテゴリー横断的な幅広い知識のマーケターを目指すための5冊です。
1. 仕組み重視、データ重視のマーケティング力を身につける
『営業を変えるマーケティング組織のつくりかた』 上島千鶴著 技術評論社
主にBtoB企業にコンサルティングを行っているNexel社の代表を務める上島氏の著作です。MAツールの普及などで企業はオートマチックなマーケティングを目指していますが、マーケティングの本質は顧客の興味関心の喚起から受注まで一貫したプロセスを作り上げ、トライ&エラーで受注精度を上げていくことです。KKD(勘と経験と度胸)による第一世代の営業プロセスから、DXにいたる第五世代のセールス・マーケティング組織への改造プロセスの提案が具体的に書かれています。タイトルは「営業を変えるマーケティング組織」ですが、現代においてはマーケティング能力をセールスプロセスに関わるすべての人が身に着けるべきと説いています。
『データドリブンセールス』 高橋威知郎著 同文館出版
データ分析のコンサルティングを展開。高橋氏は自らをデータネクロマンサー(データの呪術師)と称しています。データ重視のマーケティングを展開するためには、そのデータをどのように集めてくるかがテーマになりがちです。そのために、MAツールや分析ツールをまずは導入してみるということを考えるわけですが、高橋氏は、データ活用とは「身近な行動変容を観察し、それを数値化すること」が本質であると説明しています。つまり、いかに多くのデータを蓄積するかよりも、何にデータを使うべきかという方向から考え、その結果を得るための数値を求めることが重要なのです。
彼は、データ活用の最初の一歩は、データによって変革できる筋のいいテーマを探し当てることだと述べています。言い換えれば、プロセス改善のポイントを発見し、それをデータによって行うその“習慣”こそが、データドリブンなセールス、そしてマーケティングの実現だといえます。ツールが吐き出すデータのみにすがるのではなく、定性的な変化を数値化していく価値を、本書は教えてくれます。
2. マーケターとしての創造力を鍛える
『クリエイティブ・マインドセット』 トム・ケリー&デイヴィッド・ケリー著 日経BP
世界的なデザイン会社「IDEO」の創業者、ケリー兄弟の著作。40歳以上のマーケターは2002年に出版された「発想する会社」という本をご存じかもしれません。私も20年前に夢中になって何度も読みました。IDEOはアップルの初代マウスなど、世の中にないクリエイティブな製品の創出をサポートしてきました。今でこそ、さまざまなプロセスにおいてデザイン思考の重要性が叫ばれていますが、20年前に人間を観察すること、プロトタイプを制作し問題点をみつけること、予想外のことを予想すること、枠をはみ出すことなど、創造性を商品の開発プロセスに具体的に組み込んでいることを提示したのは画期的でした。
本書では、勇気と好奇心をもって想像力を披露しよういうマインドセットとその成功事例が多く書かれています。20数年もマーケターをやってきて、創造性のかけらのない私にも自分のアイデアを提示する勇気を与えてくれます。長年外資で働いていると、欧米人は日本人にくらべて大胆に見えるものですが、本書の「欧米人も日本人と同じように自分のアイデアをさらす恥ずかしさを感じている」という記述は新鮮でした。あとがきに書かれていますが、欧米人から見ると日本人のほうがクリエイティブな感性をもっているように見えるそうです。さあ、創造的な商品、サービス、マーケティング施策を作り出しましょう。
3. 未来を予測し、そこからストーリーを語る
『2030年:すべてが「加速」する未来に備えよ』
ピーター・ディアマンデス&スティーブン・コトラー著 NewsPicks パブリッシング
シンギュラリティ・ユニバーシティの創設者のディアマンデス氏と、ジャーナリストのコトラー氏の共著。
ベストセラーになっていたのでお読みになった方も多いかもしれませんが、2020年に出版され10年後の未来を予測した本です。テクノロジーによって世の中、特に主要な業界がどんな変化を見せるか、キーワードは「コンバージェンス(収束・収斂)」です。10年後の世界では画期的な新しい技術が生み出されるよりも複数の機能やサービスが技術により統合されて新しいライフシナリオを生み出すことが主流になってきます。空飛ぶ車や意識のアップロード、宇宙移住など、既存技術の収斂により新しい未来世界の入り口が、10年後に実現すると述べています。
また、あらゆるサービスはパーソナライズされると断言しています。デジタル化されたシステムの中に人間性を取り込んでパーソナライズしていくことは、すべての業界において必須のことであると述べているのです。こういう未来予測の本を読んで、そこから自分たちが今どの位置にいるのか考え、それを顧客に語ることが大切です。いろいろな製品・サービスが世の中にあふれ、その中で自社製品の価値を差別化し、お客様に伝えるにはストーリーで語ることが必要です。
『One to Oneマーケティングを超えた戦略的Webパーソナライゼーション』
トーマス A.フォーリー 著 日経BP
最後に弊社シルバーエッグ・テクノロジーの創業者、トム・フォーリーによる著書をご紹介します。本書は2002年に上梓され、未だ高等教育でのマーケティングの教科書として扱われています。20年前の本ですが、デジタルチャネルにおけるパーソナライゼーションの来るべき未来が描かれています。今日あらためて本書を読むと、その一部が現実のものとして達成されつつあり、また2030年への繋がりを感じさせ興味深いです。シルバーエッグ・テクノロジーでは、現在もパーソナライゼーションを主軸にマーケティングについての情報を提供し、お客様のシステムへのパーソナライゼーション実装のご支援を続けています。
いかがでしたでしょうか。マーケティングの世界は日々変化しています。巣ごもりの影響でビジネス書の売上が上がったというニュースも記憶に新しいですが、今後はどんな変化が待ち受けているのでしょうか。
創造し未来を描くマーケターであり続けるために、ぜひご参考にしていただき、デジタルマーケティングを加速してください。