「今、読んでほしい」書籍3選~ブランドとはストーリーである~


2022年4月、個人情報保護法改正が施行されました。今回の改正のポイントは、個人の権利利益の保護と活用の強化、越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応、AI・ビッグデータ時代への対応等が念頭にあります。これは2016年にEUで制定された「EU一般データ保護規則(GDPR)」の流れをくむもので、デジタルマーケティング領域においては、個人関連情報を定義し、必要が認められればサイト内でのCookieの活用に際して、ユーザーへの同意を取り付ける必要が発生しています。
なお、自社サイト内でのCookie活用、いわゆるファーストパーティ Cookieは今回の規制の対象外です。

 

Branding

ブランドとはストーリーである

 

GDPRへの対応もあってか、多くのWebサイトが、画面にCookie利用への同意(オプトイン)を表示するようになっています。ユーザーが同意をしないと、場合によっては、そのユーザーに最適なコンテンツやサービスを提供することが難しくなります。

では、どうすればユーザーはCookie利用に同意してくれるのでしょうか? ユーザーの動機を考えれば、それはひとえに、その会社、製品、サイトのブランディング力にかかっていると言えます。企業のWebサイトを訪問したユーザーが、事前にそのブランドを十分認知していて、信頼に足る企業だと考えていれば、Cookieを受け容れる確率も上がるはずです。

この機会に一度立ち止まって、自社のブランド価値とは何かを考えてみてはいかがでしょう?
今回はブランドの価値、そしてブランドがもたらすビジネス価値について考えるためにおすすめの本を紹介します。

 


ブランドとはストーリーであり企業戦略である

『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』 楠木健 著 東洋経済新報社

一橋ビジネススクール教授の著者が2010年に上梓したベストセラーです。もうすでにお読みの方も多いと思いますが、企業戦略においてのストーリーの重要性について再確認しておくには大変参考になる本です。

この本の中では、持続的な利益を生み出すための競争戦略、すなわち差別化の構築メソッドを解説しています。そして最終的な成果物は企業のコア・コンピテンシー(企業の核となる価値)をあぶりだすことにあります。

ブックオフ「ものを捨てない人のためのインフラを提供する」、ホットペッパー「生活圏の事業者と消費者をつなぐ狭域情報を提供する」、進研ゼミ「子供を含めた家族のコミュニティの学習を促進するコミュニケーションを提供する」―――本の中で著者はさまざまな企業への研究、インタビューを通じてその競争戦略ストーリーについて解説しています。

10年以上前に書かれた本なので、その事例企業がどのような変化を遂げているか、コア・コンピテンシーは保たれているか。そういう視点でもう一度読んでみると改めて企業のブランド価値、戦略について学ぶことができます。

 

ブランド価値とは一貫性である

『レゴ(LEGO) 競争にも模倣にも負けない世界一のブランドの育て方』 蛯谷敏 著 ダイヤモンド社

 

誰もが知るデンマークの玩具メーカーLEGO社の復活物語です。

「え、レゴなんか、どこにも負けない強いブランドでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、あの色鮮やかなプラスチックの塊は1980年代に特許が切れ、中国などで作られた安価な模造品に叩きのめされ、際限のない多角化の道を模索した結果、経営が転覆しそうになったという歴史があります。

その中において新任のCEOであるクヌッドストーブ氏が、LEGOのコア・コンピテンシーである「世代を超えた遊ぶ方を提供する」というパーパスを再定義し、それを戦略にしたというストーリーが書かれています。その後、同社は改めてさまざまなメディア、商品、キャラクター、ライセンスなどを絡めた多角化を進展させました。しかし、そこには一貫したブランド戦略がありました。コラボレーションするのは「スター・ウオーズ」、「ハリー・ポッター」、「スーパーマリオ」など、いずれも世代を超えて愛されるコンテンツばかりです。この製品のパーパスとの一致が、躍進の原動力となりました。多角化戦略にも自社のブランドストーリーを貫くという非常に興味深いストーリーです。

 

テクノロジーをブランド戦略に生かす

『D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』 佐々木康裕 著 NewsPicks パブリッシング

 

DtoCとは「Direct to Consumer」の略で、製造者が直接、顧客に対して販売していくモデルです。2000年代後半から市場に登場し、日本ではソニーやユニクロなどが早くからDtoCを展開しています。メーカーが直販店舗やデジタルチャネルを活用することで流通コストを省略し、競争的な価格の提供を実現、優位性を得てきたDtoCモデルですが、デフレ下の日本においては、単一メーカーによる販売チャネルという構造が仇となり、一般的なBtoC向けECサイトとの商品のアイテムバリエーション、ノンブランド製品との価格競争などに晒され続けています。

この本ではDtoCの中心戦略として「ストーリーテリング」×「データドリブン」をあげており、簡単に言えば、商品を軸にストーリーを展開し、それに対する共感をデータとして定量的に測定し活用するということの重要性についてです。これはECサイトのみならず、ソーシャルメディア、実店舗などさまざまなチャネルで実現する必要があります。

また、今後ポイントなるのが4P (Product、Price、Promotion、Place)から、4E(Experience、Exchange、Evangelism、Everyplace)への転換だと説明しています。興味深いー例として、アメリカのCasper(キャスパー)という寝具用品ベンチャーのDtoCを紹介しています。マットレスを圧縮しコンパクトにして宅配を実現するというモデルで初期の成功を収めた同社でしたが、マットレスは数年のスパンで再購入されるため、ユーザーが次の購入時にまたCasperを選ぶかどうかが課題でした。そこで同社は、利便性、価格優位だけではなく、顧客との関係性を切らさないようにするという戦略をとりました。たとえば、ユーザーストーリーの観点から、寝室のポータブルライトのような睡眠に関するアイテムを商品化して提供するなど、顧客のライフスタイルに合わせブランドとの接点を作りつづけたのです。この戦略は奏功し、競合の業界最大手の寝具チェーンは存在価値を失って破産に追い込まれました。

このように、顧客が目を離せないブランド価値を提供し続けるには、すべてのチャネルでのブランド特有の世界観を提供し、そのカテゴリーにおいてファーストチョイスの企業となる必要があります。そして、DtoC企業のゴールとしてユーザーの嗜好を客観的、定量的に評価することで持続的な利益構造の実現、すなわち顧客生涯価値(LTV)の向上を目指す必要性を説いています。

 


 

個人情報保護法の改正により、サイトを運用する企業にとっては、日頃よりブランドのロイヤリティを向上させていくことが今後ますます重要になります。

「ストーリー」、「コア・コンピテンシー」、「テクノロジー」という三つの観点から、改めて自社のブランディング戦略を見直す参考になる3冊をご紹介しました。

弊社では、デジタルチャネルをパーソナライズすることにより顧客生涯価値の向上を実現するソリューションを提供しておりますが、同時に顧客企業のブランド価値をさらに提供できるようなご支援を引き続き提供していきたいと考えています。

 

シルバーエッグ・テクノロジー株式会社
CMO 兼 マーケティングディレクター
倉石 英典



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