アイテム購入までの楽しい買い物体験を創る!パーソナライズ化された「おすすめ一覧ページ」の導入メリットと活用方法
ECサイトを利用するユーザー(消費者)が、最も感動する瞬間とはなんでしょうか?それは、良いものを“見つけた”ときです。自分のセンスにピッタリな商品、より安い商品、いま必要としている商品。どんな商品かは人によって異なりますが、「見つけた!」「出会えた!」という感動はユーザーの心に刻まれ(“セレンディピティ”と表現される体験です)、購買意欲だけではなくサイトへのロイヤリティを向上させます。
商品の魅力を発信するためのマーケティングテクニックは数多くありますが、ユーザーによる自発的な「発見」を促すことは容易ではありません。とはいえ、AIを使ってユーザーの嗜好を分析することで、この「発見」の体験を起こりやすくすることはできます。
今回は、レコメンドエンジンが搭載するAIの能力をフル活用し、「自分にピッタリなアイテム(商品)の発見」を創りだすソリューションとして、パーソナライズされた「おすすめ一覧ページ」の活用方法について解説します。
レコメンドエンジン『アイジェント・レコメンダー』のノウハウを理解し、EC事業者向けにサービスを提案しているシルバーエッグ・テクノロジーのセールス担当、角田 淳と塩月 彩に説明してもらいました。
各ユーザーにパーソナライズされた「カタログ」のようなページ
▼アイジェント・レコメンダーを導入している事業者さんの中でも、「おすすめ一覧ページ」を導入しているサイトが増えていると聞きます。このページはいったいどのようなものなのでしょうか?
角田:「おすすめ一覧ページ」とは、その名の通り、レコメンドエンジンの機能を使って、ユーザー一人ひとりにとって興味がありそうなアイテムだけを1ページにまとめて一覧表示するページです。
よくあるレコメンドエンジンの使い方は、サイトのトップページや商品詳細ページの下の方に「あなたへのおすすめ」というセクションを設けて、アイテムを3~5つぐらい出すだけです。これに対して「おすすめ一覧ページ」は、このページの内容すべてがAIによってパーソナライズされたアイテムの紹介となっています。
塩月:このページは、AIがユーザー一人ひとりの行動分析をもとに「探していそうなもの」「嗜好に合いそうなもの」だけを並べた、「パーソナル・カタログ」のようなページです。そのコンテンツはユーザーがアクセスするたびに、リアルタイムに自動生成されます。サイトの管理者は初期のレイアウトを作成してしまえば、あとはAIにおまかせで内容の更新作業をする必要がありません。
AIの働きについてもう少し細かく説明しますと、「おすすめ一覧ページ」では、ユーザーが過去に閲覧したアイテムから、次にどんなアイテムを閲覧するかを推測する「BB(Browse-Browse)相関」というアイジェント・レコメンダーのアルゴリズムを使います。
アイジェント・レコメンダーには、閲覧したアイテムと購買したアイテムの関係性を見る「BO(Browse-Order)相関」というアルゴリズムもありますが、「おすすめ一覧ページ」に限って言えばBB相関による予測が有効であるというノウハウが確立しています。
そのため、より多くの点数を見てもらえばもらうほど、高精度・マッチ度の高いアイテムを自動で提示することができます。
▼各ユーザーにパーソナライズされたページというと、会員用のマイページが思いつきますが、「おすすめ一覧ページ」は役割が違うのでしょうか?
角田:収集するデータとページの特徴が違います。マイページは、会員情報のほかに購入履歴などユーザーが具体的にとった行動の記録を開示させるものでその内容は1人ひとり異なりますが、表示されるアイテムは過去のものに固定されています。これに対して「おすすめ一覧ページ」は、ユーザーが求めているアイテムを予測して提示するので、同じユーザーでもアクセスするたびに異なるアイテムが表示されます。
もちろん、マイページの中に「あなたへのおすすめ」を表示したり、「おすすめ一覧ページ」へのリンクをつけたりするのも良いやり方だと思います。
選択肢を増やすことで、新しい発見をしてもらえる
▼一覧ページは「カタログ」のようなページということですが、具体的にどのようなレイアウトにすべきですか?
塩月:数十点のおすすめアイテムを、タイル状に敷き詰める構成が効果的かと思っています。ポイントは、画像を大きくすることです。リスト形式で商品の概要文を並べるのではなく、文章は商品名と価格程度に絞って、画像のインパクトで推すと、クリックに繋がりやすくなると思います。
トップページや商品詳細ページのレコメンドセクションでは、レイアウトの制限のために画像がどうしても小さく表示されがちです。おすすめ専用のページでは、魅力的な画像をより大きく表示することで、ユーザーさんにウィンドウショッピングのように楽しく眺めてもらい、「いいもの見つけた!」という感動をもたらすことができると考えています。
角田:導入を検討いただける事業者さんからは、よく「表示するアイテム数が多すぎると見にくくなりませんか」と聞かれますが、そんなことはありません。
サイトの構造にもよりますが、レイアウト的には横5点×縦6点の30点ほどで表示させるのが典型的です。多い場合、50点以上のアイテムを表示している事業者さんもいらっしゃいます。
「おすすめ一覧ページ」では、アイテム数が多ければ多いほどユーザーにとっての選択肢が広まって、新しい発見をしてもらえる可能性を高めることができます。もちろん、あまりにアイテム数が多いとレコメンドの予測精度が薄れてきますので、適度にバランスをとる必要はあります。
また、カテゴリーフィルタリング機能を使って、「おすすめ一覧ページ」に表示されるアイテムを制御しようとする事業者さんもいらっしゃいますが、我々としては、内容はあえて制御しない方が良い結果を生むことが多いと考えています。
カテゴリーフィルタリングとは、「このページにはこのカテゴリーだけ出したい」とか、あるいは逆に「このカテゴリーは出さない」というように、カテゴリー単位で出すアイテムを制御するフィルタリング設定です*。
トップページのような商品インデックス機能を持つページ、またカートページのように「異なるカテゴリー」を見せることでクロスセルを狙えるページなど、カテゴリーフィルタリング機能が求められるシーンは多いです。
しかし「おすすめ一覧ページ」では、むしろカテゴリーやジャンルを問わないさまざまなアイテムが並ぶことで、ユーザーが本当に欲しかったものを選びやすくなるのではと思います。また、雑多なアイテムの中から一つを選ぶという行動をAIが観察し学習することで、さらに質の高いレコメンドを実現していきます。そのためにも、最初から自由度が高く、たくさんの選択肢を与える方が良いです。
* カテゴリーフィルタリングの活用方法はこちら: 「レコメンド結果をフィルタリングし、より使いやすいサイトに! レコメンドエンジンの付加価値向上テクニック」
用途に合った「おすすめ一覧ページ」への誘導方法
▼「おすすめ一覧ページ」をより多くの方にご覧いただけるために、サイト内でどのように誘導するのが最適ですか?
塩月:トップページのレコメンドセクションに「おすすめをもっと見る」という、ボタン(リンク)を設置することが多いです。
ほとんどのユーザーはトップページから商品選びを開始するので、その中に新着製品セクションと同じようにレコメンドセクションを設けることで、ユーザーの関心を引くことができます。そこに「もっと見る」とボタンがあれば、ユーザーの探求心を喚起し、違和感なく「おすすめ一覧ページ」に誘導することができます。
角田:商品の詳細ページに「おすすめ一覧ページ」のボタンを置くことも多いです。転職サイトの例で言うと、自分が気になる求人の詳細ページを開いたら、下の方にも今見ている会社と同じような業種や似た条件の企業がレコメンドされることがあります。
ほとんどのユーザーさんは、転職をするときには「もっと自分に合った会社があるかも」と思い、多くの候補からできるだけ慎重に会社を選んで探すでしょうから、ユーザーが一番納得できる企業を見つけ出してもらえるためには、より多くの選択肢を提示して、出会いの機会を創ることが重要です。
「おすすめ一覧ページ」に誘導することでこうした機会を促し、ユーザー自身にピッタリだと感じられる情報を見つけられる瞬間を増やすことができます。
そのほかにも、サイトのグローバルナビに「おすすめ一覧」へのリンクを置いてしまって、気が向いたらいつでもアクセスできるようにするなど、ユーザー導線の作り方はいくつかあるかと思います。弊社のコンサルタントが、業界やビジネスモデルに応じた最適な導線や設置場所を一緒に検討し、「おすすめ一覧ページ」の効果の最大化をお手伝いできると思います。
メールマガジンでも「おすすめ一覧」を実現
▼「おすすめ一覧ページ」の活用方法はほかにもありますか?
塩月:実はWebサイトではなく、メールマガジンのコンテンツとして「おすすめ一覧」を配信することができ、これがすごく効果を上げています。
アイジェント・レコメンダーのオプションサービスに「レコガゾウ」というパーソナライズド・メールの仕組みがあります。これは、ユーザーがメールを開封すると、それをサーバー側で感知して、瞬時に一人ひとりに合わせたおすすめアイテムをメールコンテンツに表示させることができるものです。この機能で、Webサイトと同じように、タイル状におすすめアイテムが敷き詰められた「パーソナル・カタログ」のようなメール文を送信することができます。
ただし、このサービスはHTMLメールでしか使えません。そこで、テキストメールでメルマガを配信する場合、メール文に「おすすめ一覧ページ」のURLを張り付けて配信することを推奨します。ランディングページをパーソナライズすることで、「発見」の体験を促すわけです。
このメールを用いた「おすすめ一覧」戦略は、メール経由でのコンバージョンを300%向上させるなど、過去の実績から大きな成果を生んでいます*。
* 事例はこちら: 『もっと素敵なものに、いつも出会えるようにする』パーソナライズド・メール戦略 – 株式会社ピーチ・ジョン
使いやすいサイト作りでコンバージョン向上
▼おすすめ一覧ページによって、コンバージョンが上がる理由はどこにあるのでしょうか?
角田:「おすすめ一覧ページ」は、自分にピッタリなものが見つかるという“感動の瞬間”を増やし、サイト内でのUX(ユーザー体験)を良くすることができます。また、自動化された「パーソナル・カタログ」を表示することで、ユーザーは検索やソートをかける手間なく、すぐに欲しい商品にたどり着くことができます。求めているものへの誘導が短縮されれば、離脱率が下がり、サイト内でのコンバージョン率を押し上げることができます。
「新しい出会い」の瞬間が多いサイトは、使いやすくて楽しい買い物体験ができ、またサイトを見たいと思ってもらえるようなリピーターも増えるはずです。長期的な視点でも、LTVの向上に寄与することでしょう。
塩月:私たちシルバーエッグ・テクノロジーは、ユーザーと事業者両方にとってメリットと感じられるECサイト作りや改善を目指しています。「おすすめ一覧ページ」は、私たちがユーザーのために、事業者と一緒に企画・設計できるソリューションの良い例だと思っています。弊社独自のAIの機能で、よりよい顧客体験を一緒に作っていきたいです。
まとめ
・ 「おすすめ一覧ページ」とは、レコメンドエンジンの機能を使って、各ユーザーにとって興味のありそうなアイテムを1ページにまとめて表示する「パーソナル・カタログ」のようなページ
- AIによってユーザーの行動分析で表示アイテムを予測する。BB(Browse-Browse)相関というアルゴリズムを使用
・ ページをタイル状の構成にして、レコメンドするアイテムを大きな画像で見せるとクリックに繋がりやすくなる
・ 表示させるアイテムの制御ができるカテゴリーフィルタリング機能は、あえて組み合わせない方が良い
・ 「おすすめ一覧ページ」への誘導ボタンは、トップページや商品詳細ページに設置することが多い
- より多くの選択肢を提示して、アイテムや商品との出会いの機会を創ることが重要
・ メールマガジンのコンテンツとして「おすすめ一覧」を配信すると効果的
- HTMLメールの場合は、オプションサービス「レコガゾウ」で実現できる
- テキストメールの場合は、「おすすめ一覧ページ」のURLを張り付けて配信することを推奨
・「おすすめ一覧ページ」でサイト内でのUXを良くして、離脱率の減少やコンバージョン率向上、長期的な視点でのLTV向上に発展できる
(取材 / 編集:矢野 アマンダ有梨)