ECサイトの客単価を上げる! クロスセル・アップセルを実現するAIレコメンドエンジン活用術
多くのEC事業担当者は、レコメンドエンジンを「似た商品を提示して商品選びを助けるツール」として捉えがちです。しかし、予測AI技術を搭載したレコメンドエンジンは、適切なチューニングと配置によって、顧客の「もう1点欲しい」という購買意欲を刺激し、同時購買点数を増やし、結果としてセッション当たりの購入単価を上げることが可能です。本記事では、その具体的な手法について解説します。
【INDEX】
購入意欲を高めるタイミングと場所
クロスセルで提案すべき商品の選定
価格戦略による併売率の向上
AIレコメンドの活用による効果と事例
アップセルを狙ったレコメンドの活用と事例
まとめ
購入意欲を高めるタイミングと場所
まず、どのタイミングで商品を提案すれば「もう1点欲しい」と思ってもらえるかを考えてみましょう。効果的なタイミングは、顧客が商品をカートに入れ、決済ボタンを押す前のフェーズ、つまりカートページです。この段階で適切な商品を提案することができれば、衝動的な追加購入の可能性が高まります。
なお、カートボタンをクリックした後にカートページに遷移しない(商品詳細ページなどに留まる)設計のECサイトでは、レコメンドエンジンをMAや接客ツールなどと連携する施策が有効です。カート投入後に「一緒に買うならコレ!」といったメッセージとともに、最適なレコメンド商品をポップアップ提示させると、ユーザーの購入モチベーションを高めることができます。
クロスセルで提案すべき商品の選定
次に、カートに入れた商品に対してどのような商品を提案すれば追加購入につながるかが重要です。ここで注意すべきは、カート内の商品と「似ている」商品や、「比較検討されている」商品を提案しても効果が薄いという点です。同じような商品を一緒に購入しようとするユーザーは少ないでしょう。むしろ、カート内の商品と組み合わせて使いやすい商品を提案すべきです。
ここで、AI搭載レコメンドエンジンの力が活きてきます。AIは、過去の多様なユーザーの購買履歴を分析し、現在カートに入っている商品と一緒にどのような商品が購入されているかといったトレンドを把握します。さらに、同じカテゴリーの商品をレコメンド「しない」といった設定を行うことで、似た商品が提案されるのを防ぎ、純粋に組み合わせ購入が起こりやすい商品だけを、自動的にレコメンドできます。例えば、ジャケットをカートに入れている場合はシャツやパンツを、カレールーをカートに入れている場合はジャガイモや人参、玉ねぎをレコメンドする、といった具合です。
もちろん、AIを使わずに「この商品がカートに入ったら、必ずこの商品もレコメンドする」と手動で設定することも可能ですが、これは商品ごとに設定する手間がかかりますし、レコメンド商品が販売終了になっていると、購入できない商品をレコメンドしてしまうリスクもあります。何より、ユーザーの嗜好は多様なので、すべてのユーザーに同じものをレコメンドしても、それが響くとは限りません。カレーには牛肉だ! というマーケターの思い込みで、毎回カレールーと鶏肉を購入している人に牛肉をレコメンドしても、同時購買は起こりにくいのです。
▲ ついついもう1品カートに入れてしまう……そんな体験を、レコメンドAIが作り出す
価格戦略による併売率の向上
併売率を上げるためのもう一つのポイントは、敢えて少し安い商品に絞ってレコメンドすることです。これは「ついで買い」を促すための常套テクニックです。レコメンドエンジンも価格フィルターなどを使った提案の制御ができれば、例えば「高価格ジュエリーを購入しようとしているユーザーに、普段使いのジュエリーをもう1品」とか、「シューズを購入しようとしているユーザーに、靴ケア用品を提案」といったことが可能になります。
さらに、「1万円以上送料無料」というサービスを提供している場合、メインの商品に加えて、購入価格を1万円以上にするために安価な商品をもう1品提案するのは非常に効果的です。
AIレコメンドの活用による効果と事例
AI搭載レコメンドエンジンを活用することで、上述のような購入単価向上施策を実施できます。この施策を実現するための製品仕様のポイントをまとめると、ページごとに異なるアルゴリズムでのレコメンド提案が可能であること、カテゴリーや価格などのセグメントで絞ったレコメンド提案ができること、そしてAIが常に全ユーザーの購入トレンドを踏まえて、在庫商品の中から適切な商品を選ぶ性能があることです。
実際に、シルバーエッグ・テクノロジーのアイジェント・レコメンダーを利用しているアパレル業界大手のセレクトショップでは、レコメンドをクリックしたユーザーの同時購入点数は、通常の1.3倍に上がるとの併売率向上効果が確認されています。
アップセルを狙ったレコメンドの活用と事例
クロスセル型の購入単価向上施策のほかに、アップセルを狙えるレコメンドの使い方もあります。これは、めったに購入しない嗜好品やギフト商品の販売サイトで特に効果があります。こういった商品は「普段よりもちょっといいものを買ってみよう」というモチベーションをユーザーが持ちやすいようです。例えば、ワインショップ「エノテカ・オンライン」では、ユーザーの購入傾向を学んだAIが自動的に高価格帯の商品をレコメンドするようになり、それによって購入単価が上がったという事例があります。 (事例記事はこちら)
アイジェント・レコメンダーは、サイト内に設置された個々のレコメンド表示枠がどれだけクリックされ、売上を上げたかといったデータを分析することができます。ユーザーがより高額な商品を選びがちな場面がデータから明らかになれば、それに合わせてルールを設定し、特定金額以上の商品のみが出るように設定するといった設定も可能です。こういったデータに基づく品質の改善提案やABテストは、シルバーエッグのコンサルタントが行いますので、問い合わせてみてください。
▲ ギフトや嗜好品といった商品は、より高額の商品のレコメンドが効きやすい
まとめ
レコメンドエンジンは、単なる商品提案ツールではなく、適切なタイミングと方法で活用することで、顧客の購買意欲を高め、客単価を向上させる強力な手段となります。クロスセルが発生しやすいタイミングで、個々の客のニーズに沿った最適な品をAIに選ばせ提案することで、顧客の反応は改善します。結果として、セッション当たりの販売商品点数の向上、販売額の向上が実現できます。AI技術を駆使したレコメンドエンジンの導入を検討し、効果的な施策を展開してみてはいかがでしょうか。
(文責:園田 真悟)
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