レコメンドエンジンの導入効果とは? 多様なメリットとロジックを理解しよう
ECサイト、ニュースサイトなど、様々なサービスで見られる「この商品を購入した人はがよく購入している商品」とか「あなたにおすすめの記事」といったレコメンド機能は、ユーザーの閲覧や購買行動を促し、PV数や売上の向上を実現する重要な存在です。ユーザーとってに必要な情報を提供し、サイトの利便性を上げるレコメンドは、あらゆる規模のオンラインビジネスにとって、必要不可欠なものとなっています。
レコメンドエンジンを活用し、自社サービスの競争力を向上するためには、どんな知識が必要でしょうか? この記事は、いま、自社サイトへのレコメンド機能導入を考えている、またはレコメンド機能の効果が思うように出ていないことに悩んでいる企業のWebマーケティング担当者の方に向け、以下の課題にお答えします。
・レコメンド機能の導入で、どのようなメリットがあるのか知りたい
・レコメンドエンジンにはどのような種類があり、何を選べば良いのか知りたい
なお、記事の終わりには20社以上のレコメンドエンジンの導入事例記事へのリンクも掲載していますので、こちらのページもご覧ください。
▲様々なサイトで使われるレコメンド
INDEX
・ECサイトやメディアサイトがレコメンド機能を導入する目的とは?
1. 商品の購買率(コンバージョン率)向上
2. サイトからの離脱の抑制と、ユーザー回遊性(セッションあたりのPV数)向上
3. サイト再訪率・F2転換率の向上
・レコメンドエンジンの仕組みと機能
1. サイト運営者が任意に決めるルールベースのレコメンド
2. 属性フィルタリング/ターゲティングによるレコメンド
3. AI/機械学習技術を用いた、コンテンツ内容の解析に基づくレコメンド
4. AI/機会学習技術を用いた、ユーザー行動情報に基づくレコメンド
・まとめ
ECサイトやメディアサイトがレコメンド機能を導入する目的とは?
ECサイトやメディアサイト(コンテンツ配信、不動産情報、人材情報サイトなどを含む)にレコメンド機能を導入する主な目的には、以下の3点が挙げられます。
1. 商品の購買率(コンバージョン率)向上
レコメンド機能は、さまざまなデータを基に、サイトを訪れたユーザーの興味やニーズにあった商品を提案することで、購買の意思決定をサポートします。たとえば、ECサイトではユーザーが閲覧した商品に基づいて「よく購入されている商品」や「比較対象となる商品」などを提案することが一般的です。これにより、ユーザーは自分に合った商品を簡単に見つけることができ、購買に至る確率が高まります。また、もともと購買意欲が薄かった顧客に、魅力を感じる商品を提案することで、突発的な購買行動を後押し(ナッジ)する効果もあります。
2. サイトからの離脱の抑制と、ユーザー回遊性(セッションあたりのPV数)向上
ユーザーは、訪れたサイトに自分が求めている情報が無かったり、見ている商品に魅力がないと感じると、すぐにサイトから離脱してしまいます。そんな時にレコメンド機能は、ユーザーが興味を持ちそうな別の商品やコンテンツを次々に提示することで、ユーザーの早期離脱を防ぎ、サイト内の回遊へとユーザーを導く効果があります。たとえば、ECサイトの商品ページや、ニュースサイトの記事ページでは、ページの下部に次に見るべき商品やコンテンツを紹介し、ユーザーがサイト内で多くのページを閲覧するように導いています。
3. サイト再訪率・F2転換率の向上
レコメンド機能は、ユーザーが再度サイトを訪れる理由を提供することにもつながります。適切なレコメンドを通じて「このサイトは自分の好みを理解している」とユーザーが感じることで、再訪率が向上します。これらのレコメンド施策は、サイト内での実施に加え、サイト離脱後にユーザーに送信するメールやLINEでも実施することで効果が高まります。メールで以前購入した商品と組み合わせて使いやすい商品をレコメンドすることで、ユーザーを2回目の購入へと導き、F2転換率を改善することも可能です。
このほかにも、組み合わせて買いやすい商品をレコメンドすることによる併せ買いの促進(セッション当たりの購入単価の向上)をしたり、ブログ記事やコーディネート写真などのレコメンドによって商品理解を促進したりするためにも利用できます。また、ユーザーが思いもよらない商品を紹介することで、セレンディピティ(発見の喜び)をもたらし、顧客体験を向上させる効果もあります。
▲動画サイトの連続視聴や、ECサイトのコンバージョン率向上など、さまざまな効果がある
レコメンドエンジンの仕組みと機能
レコメンドエンジンの仕組み(ロジック)には、シンプルなルールベースのものから、最先端のAI技術を使うものまで幅があります。効果を最大化するためには、サイト内でユーザーにどんな行動をとってほしいのかを考え、最適な技術を選択することが求められます。レコメンドエンジンの主要なロジックには、以下のようなものがあります。
1. サイト運営者が任意に決めるルールベースのレコメンド
サイト運営者が事前に設定した条件やルールに基づいて、レコメンデーションを行う手法です。たとえば、運営者が新商品をECサイトのデータベースに登録する際に、あらかじめ「関連商品」という枠に別商品を入れておくことで、その商品を閲覧したユーザーに関連するアクセサリーやアップセル商品をかならず提示することが可能です。
ルールベースのアプローチは、特定のプロモーションや在庫調整の目的に対して、運営者が直接コントロールできる点が強みです。しかし、ユーザーのニーズや好みは反映されないため、ユーザーにとっては「不要な商品の押し付け」と感じられてしまう場合があります。また、商品点数が増えると業務が非常に煩雑になる問題もあります。
2. 商品の属性情報(メタデータ)基づくレコメンド
主に商品やコンテンツに付与されている属性情報を基に、ユーザーに最適な提案を行います。具体的には、商品のカテゴリー、価格帯、ブランド、タグなどのメタデータを用い、ユーザーの関心にあったコンテンツを選別します。ユーザーが「スニーカー」というタグ付きの商品を閲覧している場合、同様のタグを持つ別の商品を提案することができます。
属性情報によるレコメンドは、価格情報やユーザー属性、併売分析データなど、他のデータを組み合わせることで、より効果的な提案が可能になります。しかし、商品やユーザーの静的な情報のみに基づくレコメンドは、個々のユーザーの好みやニーズの変化、市場のトレンドの変化に対応しづらいというリスクもあります。
3. AI/機械学習技術を用いた、コンテンツ内容の解析に基づくレコメンド
商品の画像やテキスト、または動画や音楽の内容をAIが解析し、類似性に基づいてユーザーに関連性の高い商品やコンテンツを提案する方法です。たとえば、一部の動画サイトでは、ディープラーニングなど高度な技術を用いた動画解析AIを用いて、ユーザーが見ている動画と似た内容の動画を提案するシステムが使われています。商品の属性情報などに表れていない複雑な情報をAIが解析することで、多様な商品の中からユーザーのニーズに即したアイテムを選び出すことができます。
AIによるコンテンツ解析技術は進化しており、最近では、生成AIなどで用いられる大規模言語モデルを利用し、精度を高めた画像解析エンジンも登場しています。一方で、一般的にAI技術を用いたツールには専門知識を用いた技術者によるチューニングが求められることが多く、設定を怠ると効果が低減するリスクもあります。AIツールは運用の自動化がポイントとなるでしょう。
4. AI/機会学習技術を用いた、ユーザー行動情報に基づくレコメンド
ユーザー行動情報に基づくレコメンドは、ページの閲覧、検索、購入など、サイトに訪問したユーザーがとる多様な行動データを収集し、AI/機械学習の手法で行動の傾向を分析します。これによりユーザーの興味や関心をとらえて最適な商品・コンテンツを提案することができます。個々のユーザーの中長期的な行動の変化を分析することで、ユーザー一人ひとりのニーズや嗜好を捉え、パーソナライズした提案ができるようになります。
また、AIがリアルタイムで行動を観察し、即座にロジックに反映することで、常に変化するユーザーニーズにも対応できるメリットもあります。たとえば、「きのうはお笑い動画を見ていたが、きょうはミュージックビデオを見たい」といったユーザーの心の変化に追従し、コンバージョン率やエンゲージメント率の向上に寄与します。一度導入してしまえば、販売商品のトレンドの変化にAIが自動追従できるのも強みです。一方で、この手法は商品やコンテンツの内容については分析しないため、誰からも見られていない商品(=行動情報が乏しい商品)はレコメンドもされづらいといった課題もあります。
▲行動情報ベースのレコメンドのしくみ
まとめ
レコメンドエンジンのそれぞれの手法には一長一短がありますが、現実的には、複数の手法を組み合わせたレコメンドが最適解となることが多いです。なかでも、パーソナライズされた提案ができる行動情報ベースのレコメンドに、カテゴリーのフィルタリングや、ディープラーニングを活用した解析を組み合わせるハイブリッドレコメンドの手法は、大規模なECサイトやメディアサイトで利用されてきました。
このハイブリッド・レコメンド手法は一般化が進み、今では中小サイトや専門性の高いサイトでも競争力の獲得のために採用されるようになっています。複数の手法を組み合わせることでサイトのビジネスモデルに適した顧客体験が実現でき、競争力の獲得が実現できることでしょう。
下記のリンク先ページには、シルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドエンジンの活用事例のインタビューが20件以上掲載されています。採用した企業の業種・業態は多種多様で、いずれも、行動情報ベースのレコメンドにさまざまな工夫をほどこしています。採用の検討にご覧ください。
事例の内容をコンパクトにまとめたホワイトペーパーは、下記からダウンロード可能です。
(文責:園田 真悟)