ネットスーパー特有の「買い回り」問題を紐解く – あわせ買い・ついで買いをどう引き起こす?


コロナ禍を契機に、スーパーマーケットのネット事業は大きく進展しました。ネットスーパーは実店舗業態と競い合うものではなく、相互補完的に顧客接点を増やすものとして捉えられるようになり、事業者はサービスの改善に力を入れています。しかし、ネットスーパーには通常のECとは異なる独自の課題があります。今回は、ユーザーのネットスーパー利用継続率に大きな影響を与える、サイト内の「買い回り」問題について深掘りし、レコメンドエンジンの活用を軸とした解決策を提示していきます。

 

▲ユーザーがどう商品を選ぶかは、実店舗とECで大きく異なる

 

 

【INDEX】
ネットスーパーの「買い回り」問題
買い回りを改善するための施策
ネットスーパーならではのレコメンドエンジン活用法
まとめ


ネットスーパーの「買い回り」問題

ネットスーパー成功のためには、乗り越えるべきいくつかの課題があります。オーダー後の即日配送を実現するロジスティックの構築や、地域・店舗ごとに在庫数も価格も異なる商品データの管理、そして、実際のスーパーマーケットのような「買い回り」の起きにくいアプリのUI/UXです 。

 

実店舗のスーパーマーケットは、 店内の導線設計が固められていて、入り口からレジまでなんとなく進むだけで主要な商品を順にカートに入れていくことができます。また、商品が並べられた棚には、ついで買い・合わせ買い購入がしやすいようなレイアウト上の工夫が仕掛けられています。

 

しかし、ネットスーパーでは実店舗で長年培ってきたノウハウが通用しません。ネットスーパーを含むECサイトは、カテゴリーごとの「階層構造」 になっており、実店舗とは根本的に異なります。ユーザーは必要な商品を探すために、サイト内検索画面と、カテゴリーごとの階層を行ったり来たりしますが、ページ遷移の手間が煩雑になると買い物をあきらめてしまうことも多々あります。

 

この問題を悪化させているのが、スマートフォンの画面の小ささです。一度に見られる商品点数に限りがあるため、目的の商品探しが阻害されるだけでなく、ついで買い・合わせ買い商品の発見も難しくなります。実店舗のような「目についた商品を、ふと手に取ってカゴに入れる」という行動が起きにくいのです。

 

▲ECでは、顧客を商品に誘導するための導線が欠けている

 

 

買い回りを改善するための施策

商品カテゴリーごとに一つひとつ選ぶ階層型のECサイト構造は、ネットスーパーでの買い回りに最適とは言えません。そこで、商品選びのためのさまざまな補助導線を作り、ユーザーのスムーズな買い物を支援する必要があります。

 

1. 商品一覧ページからの商品選択・カート投入

通常のECサイトでは、ユーザーは商品詳細ページで商品画像や説明文を読んでから「カート」に投入しますが、日常品主体のネットスーパーではそのような買い方は適していません。商品一覧ページにチェックボックスを設け、複数の商品をまとめてカートに入れる仕組みを設けることで、手軽でスピーディなショッピングが実現します。また、同じ商品をリピート買いするユーザーのため、購入履歴リストをアクセスしやすいところに配置し、再購入機能をつけておくことも重要です。

 

2. レシピ紹介コンテンツ

ネットスーパーのレシピ紹介コンテンツは、単なるオウンドメディアではありません。食事の献立から商品選びをするユーザーのための、重要な購入導線です。ここでも、紹介された食材を手軽にカートに入れられる仕組みを設けることで、ユーザーの利便性を上げることができます

 

3. パーソナライズされた商品提案

ユーザーに「ついで買い・合わせ買い」を促すために、顧客の商品閲覧履歴や購買履歴に基づいた関連商品のレコメンド機能が求められます。AIの分析でどのような商品が合わせ買いされやすいかを判断するレコメンドエンジンは、ユーザーの購買行動や閲覧行動を学ぶことで「カレールー・牛肉・玉ねぎを選択したユーザーに、じゃがいも・にんじんをレコメンド」といった、一人ひとりのニーズに沿った商品提案が自然とできるようになります。

 

▲AIならレシピに含まれる食材だけでなく、プラスアルファの商品もレコメンド可能

 

 

ネットスーパーならではのレコメンドエンジン活用法

階層構造にとらわれない補助導線作りや、狭い画面内でユーザーの関心に合わせた商品を効果的に見せるには、レコメンドエンジンの活用が有効です。買い回り支援策としてのレコメンドエンジンを、具体的にどう実装すべきか、3つサンプルを紹介します。

 

1. カートページでのレコメンド

一般的なECサイトでは、レコメンドエンジンが配置されるのは商品紹介ページです。しかし、前述のとおりネットスーパーでは商品詳細ページからの商品選択があまり重視されません。そこで、商品詳細ページだけでなく、カートページ・決済ページにレコメンド枠を設けることで、顧客のついで買いを促すことができます。これは実店舗に例えると、「レジ待ちの列に並んでいる顧客に、ついで買い商品を見せる」施策になります。

 

ただ、実店舗と違い、レコメンドされる商品はついで買い用のスナック菓子やカップ麺に限りません。AIがどんな商品をカートに入れたかを分析し、瞬時に、幅広いラインナップから購入確率の高い商品を選出できます。

 

2. リストページ・レシピページでのレコメンド

購入履歴やお気に入り商品などのリストページでのレコメンド表示は、買い回りの活性化のため非常に重要です。いつも同じ商品ばかりを購入するユーザーに対し、関連する“未知の商品”の発見を促し、購入単価の向上を実現します。

 

また、行動情報ベースのレコメンドエンジンは、レシピコンテンツのレコメンドも可能です。あるレシピを見ているユーザーに、別のレシピを推薦したり、レシピに含まれないが一緒によく買われている食材を提案したりすることで、併せ買いを促進するとともに、顧客満足度を向上させることが可能です。

 

3. 欠品商品の代替提案

ネットスーパーは一般的なECサイトに比べ、欠品が非常に起こりやすいです。生鮮品・日配品は秒単位で在庫がはけていくため、ユーザーがカートに入れた後に商品が欠品になるといったことも発生します。商品の欠品をページ内で通知する場合、その近くに似た商品のレコメンドを掲出することで、顧客の不満を緩和させることができます。

 

ただし、レコメンドエンジンは必ずリアルタイム分析・表示機能を持つものでなければなりません。レコメンドの選定方式が「Aという商品には必ずBを出す」といった“固定式”だったり、前日にまとめてAIに算出させる方法だったりすると「レコメンドされた商品も欠品している」という事態が多く発生し、顧客の不満を更に高めてしまいます。最新の在庫データをもとに、AIがその日の販売トレンドを踏まえて選定するタイプのレコメンドエンジンであれば、このようなリスクは緩和できます。

 

▲目的の商品が品切れでも、AIが別の最適な商品をただちにレコメンド

 

 

まとめ

ユーザーにとってネットスーパーのメリットは、隙間時間にサクサクとその日の買い物ができ、配送まで依頼できることです。しかし、サイト内の買い回り導線がしっかりとできていないと、顧客の“サクサク”体験は損なわれ、ネットスーパーの継続利用率は落ちていきます。長期的なユーザーの獲得のためにも、商品一覧ページの活用、レシピページの充実、そして高度なレコメンドの実装は欠かせない施策と言えるでしょう。

 

 

(文責:園田 真悟)



シルバーエッグ・テクノロジーの最新のニュースや導入事例等は、メールマガジンでもご紹介しております。

メールマガジンの配信をご希望の方は、下記お問合せフォームよりご連絡下さい。

また、製品に関するお問合せや導入のご相談は、下記お問合せフォームおよびお電話にて承っております。

お問合せはこちらから
このページの先頭へ