2023年ECを成功させるための3つのキーワード
2023年、コロナの規制も緩和されつつあり潮目が変わってきたと感じるEC事業者も多いのではないでしょうか。
今、ECがどうあるべきか?それにどう応えていくべきか?という観点から、ECを成功させるための3つのキーワードをご紹介します。
【INDEX】
・OtoO / OMO
・パーソナライゼーション
・ソーシャルコマース
OtoO / OMO
コロナ禍を経て顧客はわざわざ店舗へ赴かなくても、ネットで買い物した方が楽だということに気づいてしまいました。
2022年はオンラインとオフラインの統合を意味する「OMO」(Online Merges with Offline)が注目を集めました。
多くのブランドや店舗は、ネットの買い物になじみのなかった顧客をECに呼び込むことで、売上を確保することに成功しました。
しかし2023年、消費者の目は再び店舗に向き始め、「OtoO」(Online to Offline)すなわち「オンラインからオフラインへ」という購買行動や施策に、再度注目が寄せられています。
OtoO / OMOで重要なのは、ECと店舗との往来に顧客が垣根を感じないようにすることです。
現在では、すでに多くのブランドや大手量販店が、決済システム、在庫情報、BOPISなど、インフラや流通システム面でこれを実現しています。
また、会員ポイントの連携やクーポンを介して、EC-店舗間の顧客の流動の活性化に成功している企業も少なくありません。
とはいえ2023年からの OtoO / OMO では、いっそう進んだ形でEC-店舗間の垣根を取り払っていく必要があります。たんに利便性やコストパフォーマンスだけではなく、顧客の「体験」に配慮することが重要になります。
顧客のオフライン回帰はEC担当者にとっては残念なことのように見えますが、実際にはそうではありません。
店舗での体験から切り離されネットのみに目が向けられると、「物」と「価格」ばかりが意識され、消費者の関心は閉じられたものになってしまいがちです。
ECを価格競争に囚われた閉鎖的な空間にしないために、顧客がECを訪問するときには常にオフラインをイメージできるようにする必要があります。逆に店舗でもECにある情報はいつでも取り出せるようにしておきたいものです。
価格の比較や毎回決まった消耗品の補充だけにECが開かれていたり、ポイント付与やクーポンの利用だけに店舗でアプリを開かせているとしたら、これほどもったいないことはありません。
オンラインをオフラインに繋げ、ただの「コンバージョン」や「購入」ではなく、全体がシームレスな一つの「買い物体験」となるような施策やテクノロジーの活用が求められます。
パーソナライゼーション
「パーソナライゼーション」という言葉は10年以上前から、ビジネスで注目を集めてきました。
ECにおけるパーソナライゼーションは、サイトやメールに表示する商品のレコメンドだけでなく、アプリのプッシュ通知、個人用のサブスクリプションパッケージの提供などがあります。
2020年以降はさらに前進し、店舗やIOTを活用した消費者とインタラクティブな関係からの商品提案が注目を集めるようになりました。たとえば美容業界において、顧客一人ひとりの肌の状態や顔立ちに合わせて商品を提案するといったことは接客において当たり前のことでしたが、ここ数年ではAIが顧客とのインタラクションを通じてこれを自動的に行うといったサービスの普及が加速しました。
McKinsey & Companyの2021年の調査結果では、実に消費者の71%がパーソナライズされたインタラクションの提供を期待しており、76%はそれが実現されないと不満であると回答しています*。
2023年以降、ECでは消費者が求める顧客体験を提供するためには、AI主導のパーソナライゼーションが今後もますます重要になってくることが予想されています。
商品そのものだけでなく体験を重視する消費者傾向が続く中、AIによってパーソナライズされたサイトやアプリは、店舗同様、インスピレーションやセレンディピティの体験の場となるからです。
こうしたことから、2023年のパーソナライゼーションはただツールが導入されているだけでは十分とは言えません。
シルバーエッグ・テクノロジーの代表取締役社長&CEOトム・フォーリーが『One to Oneマーケティングを超えた戦略的Webパーソナライゼーション』を上梓し、当時としては先駆的な未来予測をしたのは2002年のことでした。そこで描かれたインターネット体験のあるべき姿は、まだまだ実現しているとは言えません。
消費者の行動にインタラクティブに反応できること、インスピレーションを与え続けられること、さらにそれを店舗やアプリを巻き込み、オムニチャネルで展開できることなど、性能面・拡張性の充実がよりいっそう重要になっていると言えます。
*https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/the-value-of-getting-personalization-right-or-wrong-is-multiplying
ソーシャルコマース
「ソーシャル コマース」とは、Instagram やTikTokといったSNSを使用して、製品やサービスのマーケティングや販売を行うことです。
通常のEコマースと異なり、顧客はSNSを離れることなく商品を閲覧・購入できるだけでなく、インタラクティブな購入体験と非常に相性が良いことも特長です。特に中国では、インフルエンサーマーケティングやライブストリーム、ARレンズによる「試着」といった機能の充実と結びつき、2021年の時点で通常のECの10倍のコンバージョン(約30%)に達することが報告されています*。
ソーシャルコマースは、中国に続いて欧米でも急速に普及しています。ライブストリームやインフルエンサーにもっとも馴染みがあるのはZ世代やミレニアム世代であるため、今後さらにソーシャルコマースが重要になってくることは言うまでもありません。
さて、日本ではソーシャルコマースはまだまだ発展途上と言えますが、2021年の経済産業省の電子商取引の調査では、企業が投資するインターネット広告費のうち35.4%はSNS広告という結果となりました。物販におけるSNS自体の影響力は非常に大きく、今後も増大していく見込みです**。
特にTikTokやInstagram上で買い物をする担い手は若年層が多く、ファッション・化粧品ではさらにこの傾向が高いといえます。
こうした背景から、2023年ソーシャルコマースへの取り組みは日本でも無視できるものではありません。
とはいえ、国内では消費者側のインフルエンサーやソーシャルコマース自体への信頼は必ずしも十分ではありません。このことは消費者庁によるステマ(ステルスマーケティング)規制への取り組みがまだ準備段階であることからも明らかです。
2023年、現段階で直接的なソーシャルコマースの取り組みがなかなかうまくいかない企業は、まずはECでSNSのトレンドをうまく連携させ、SNS中心にネットに触れ合う層に自然な買い物体験を提供できるようにする、といった取り組みも重要かもしれません。
たとえばコーディネートの投稿をEC内のオウンドメディアと連携させたり、SNSでつけられるようなハッシュタグがECの商品にもつくようにする、といった取り組みが挙げられます。
こうした取り組みは売り手側が用意したカテゴリではなく、一般の買い手にとって自然でよりインタラクティブな印象を与えることができます。
*https://www.mckinsey.com/capabilities/mckinsey-digital/our-insights/its-showtime-how-live-commerce-is-transforming-the-shopping-experience
** https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
「OMO / OtoO」「パーソナライゼーション」「ソーシャルコマース」の3つのキーワードをピックアップしました。
2022年からすでに馴染みのキーワードもあるかもしれませんが、今の状況によってその意味や方向性を見直す必要があります。
今回いずれのキーワードもECにおける「体験」と深い関わりをもつものとして浮かび上がってきました。
ECをリアルと結びついた「体験」の場とすることは、消費者にとってだけでなく、提供する側にとってもブランドのロイヤリティと価値を高めるための重要な観点です。ECがこれを実現するためには、顧客心理の理解とそれをインタラクティブに実現する高度なテクノロジーが必要です。
今後この傾向はさらに高まっていくでしょう。