F2転換率を上げるには? Part3: 心動かされる提案が2回目の購入の決め手
これまで2回にかけて、LTV向上に直結する「F2転換率(2回目の購入に至る率)」の重要性と、F2転換を実現するカスタマージャーニーの3つのフェーズのうち1つ目である、「初回購入のフェーズ」での購買率向上テクニックを紹介しました。
第1フェーズで導入したAI搭載レコメンドエンジンによるパーソナライゼーションの仕組みは、そこで蓄積したデータを使うことで、第2フェーズである「初回購入後のショップの再訪検討」と、第3フェーズである「ショップを再訪しての2回目の購入」で真価を発揮します。その仕組みとノウハウについて、紹介します。
【INDEX】
・第2フェーズ:初回購入後、2回目のショップ訪問を行う理由
・2回目のアクセスを引き起こす「具体的なニーズの喚起」
・「パーソナライゼーション」が2回目のニーズ喚起に効く理由
・第3フェーズ:2回目アクセスから2回目購入への導線
・顧客本位のコミュニケーションが作る、企業と顧客の好循環
【連載】F2転換率の向上を図るには?
・ Part1: なぜF2転換率は重要か
・ Part2: 初回訪問でまず顧客の心を掴む
・ Part3: 心動かされる提案が2回目の購入の決め手
第2フェーズ:初回購入後、2回目のショップ訪問を行う理由
初回購入を終えたユーザーが、2回目も同じブランドのECサイトで購入する理由は何でしょうか?多くのマーケターがまっさきに思いつくのが「ユーザーが初回に買ったものを気に入り、そのブランドを信頼したから」というものです。これは実際、いくつかの消費者リサーチでも確かめられている理由です。
購入後、消費者の内面で生まれた「商品購入に関する選択は間違っていなかった」という自信が、「次もここで買えば間違いないだろう」という期待を呼び起こし、ブランドの選択に繋がっていきます。
しかし、これはあくまで、消費者サイドでの”消極的な“選択の理由です。紙おむつやドッグフードなどのリピート買い商品を除けば、消費者はあくまでそのブランドを第一候補として選んだだけで、具体的な「2回目の購入商品」の選定には至っていません。
そこで必要になるのが、ショップからの能動的な消費の喚起です。2回目のアクセスを引き起こすためには、ユーザーのブランドへの信頼度が高いうちに、複数のマーケティングチャネルを通じて、企業側からアプローチする必要があります。
2回目のアクセスを引き起こす「具体的なニーズの喚起」
メッセージを送るチャネルには、ネットやテレビなどのメディア広告や、EメールやLINE公式チャネル、会員アプリを介したユーザー個人へのPushメッセージなどがあります。ただ、チャネルは何であれ、顧客の2回目の消費を喚起する決め手になるのは、「どんなコンテンツを見せるか」です。
ブランドを象徴する美麗なバナー広告や、商品開発のバックグラウンドストーリーを掲載したメールマガジンは、顧客の好感度を高め、長期的なロイヤルティ向上には役に立ちますが、2回目の消費を直接促す手段としては、まだ消極的と言えます。
一方、適切なタイミングで配信される「新製品入荷!」や「セール開始!」といったキャンペーンメール/メッセージは、ユーザーの関心を呼び起こしやすく、サイトへのアクセス率も上がりやすくなります。しかし、そこで紹介される商品が、ユーザーにとって「買いたくなるモノ」でなければ、やはり最終的なコンバージョン=購入には繋がりません。
ここで、初回購入時に商品選択のサポート役として導入されていたレコメンドエンジンが、再び効果を発揮します。セールなどの2回目の購入が発生するタイミングで、メールの中でユーザー向けの商品をレコメンドすることで、具体的なニーズの喚起ができるからです。
「パーソナライゼーション」が2回目のニーズ喚起に効く理由
ECサイト内でのレコメンドエンジンの効果について、理解するのは簡単だと思います。いま表示されている商品と似た商品や、併せ買いしやすい商品をおすすめすれば、ユーザーは商品を選びやすくなり、CVRや併売率に効果が出ます。
しかし、2回目の購入というのは、前回の購入からある程度時間が経ってから発生します。例えば初回購入が春だったとしたら、次回購入は夏や秋になっているかもしれません。そのタイミングで、果たしてユーザー個人のニーズに沿った商品がレコメンドできるのでしょうか?
ユーザー行動情報の分析をベースとする機械学習エンジンであれば可能です。これは、AmazonやNetflix、シルバーエッグ・テクノロジーが採用する方式です。
行動情報ベースのAIレコメンドは、サイトにアクセスした多数のユーザーの購買履歴や閲覧履歴を統計的に分析し、「あるアイテムを購入した人は、別種のあるアイテムも購入する確率が高い」という予測をおこなうものです。
例えば、アパレルショップで「春物の白いブラウスを購入したユーザーは、次にグリーンのスカートを買う確率が高い」というデータと、「グリーンのスカートを買ったユーザーは、次に夏物のサンダルを買う確率が高い」というデータがあれば、「春に白いブラウスを買ったユーザーは、(グリーンのスカートを買っていなくても)夏のタイミングでサンダルを買う確率が、他の商品より少し高くなる」という、予測が成り立ちます。
AIは、このような予測を、全ユーザーや全商品について、日々更新されるデータ(新商品の入荷や新たな購入の発生)を加味しながら行っていきます。単に購買履歴だけでなく、購買に至るまでの閲覧履歴を加えたり、どんな順番で商品を買ったかと言った時系列データを加えたりすることで、予測の精度はどんどん上がります。
予測精度を深めていくと、おなじ白いブラウスを購入したユーザーでも、その前に何を買っていたかによって、次に買われるだろう商品が変化します。また、白いブラウスを購入したあるユーザーがその直後に何も買わなかったとしても、似た購買行動をとってきた別のユーザーが、日々何かしら別の商品を買っているため、それらの情報を加味して予測をアップデートさせることができます。
結果として、2か月後であっても3か月後であっても(ログインIDや1st Party Cookieで個人の履歴が保持されている限り)、その時点でユーザーが最も買う確率が高い商品を提案することができます。結果として、ユーザーは「春先にブラウスを買ったら、夏になって今の自分にぴったりのサンダルがレコメンドされた!」という体験を得ることになります。
初回購入の商品に満足したユーザーに、メールやアプリを介して、他にも“自分にとって”良い商品があると気づかせることは、自分のブランドの選択が間違っていなかったという心理を強化します。2回目のアクセスを誘引するためにユーザーにパーソナライズした商品を具体的に紹介するコミュニケーション戦略は、この点で高い成果を得ることができるでしょう。
実際、シルバーエッグのメールレコメンドサービス「レコガゾウ」を使ったパーソナライズドメールの施策では、通常のメールに比べ店舗へのアクセス率(=メールのクリック率)が1.25倍になるといった成果が得られています。
第3フェーズ:2回目アクセスから2回目購入への導線
ユーザーの初回購入後のフェーズでは、「そろそろ何か欲しいな」と思うタイミングで、メールで「自分にとってベストな商品がある」ということを伝える施策が、2回目のアクセス獲得に非常に有効であるということを示しました。
最後の締めくくりとなるのは、2回目のアクセスを行ったユーザーに、実際に商品を買ってもらうフェーズです。
しかし、実はこの第3フェーズでは、第2フェーズの施策で事実上片が付いている、と言っても過言ではありません。なぜでしょうか?
第1フェーズの説明通り、サイト内でCVRが上がらない理由の多くは、ユーザーがアクセスしたページから、実際に購入したいと思える商品ページにたどり着く前に離脱してしまうという問題に集約されます。
一方で、パーソナライズドメールを使った戦術では、最初から「自分が欲しいと思える商品」が提案されています。そして、メールで提示された商品をクリックすれば、いきなりその商品の詳細ページにアクセスできるのです。あとは「カートに入れる」ボタンをクリックするだけです。
パーソナライズドメールを使ったF2転換率向上施策の真価は、まさにここにあります。2回目で購入したい商品を“探す”という面倒な工程を強いる……つまり、サイト内で不要なクリックをさせ、離脱率を上げることなく、商品の購入を促すことができるのです。
顧客本位のコミュニケーションが作る、企業と顧客の好循環
フェーズ2~3での、レコメンドエンジンを使ったパーソナライズド戦略には、さらなるメリットがあります。パーソナライズドメールで提案された商品のうち、ユーザーがどの商品ページにアクセスしたかを観測することで、AIはユーザーの好みをさらに深く学習します。
仮にユーザーがアクセスした商品ページ内で考えを変え、「買わない」という決断をしても、ページ内のレコメンドには、初回訪問時とメール内でのレコメンドを踏まえたより良い商品のレコメンドが表示されています。これにより、ユーザーのポジティブな商品探索を続けることができるでしょう。
このように、ユーザーの初回アクセスから2回目の購入に至る各フェーズで、レコメンドエンジンによる一貫した商品提案を続けることができ、「AIがユーザーの好みを予測し提案する」「ユーザーがAIの提案を受け入れる」「ユーザーの選択を学習し、AIの予測精度がさらに高くなる」という好循環が完成します。
企業側が売りたい商品を広告でプッシュするのではなく、ユーザー一人ひとりの行動を学習し、それに合わせた提案をし続けることで、ユーザーは2回目、3回目とアクセスするたびに「よりよい商品との出会い」を経験できるようになり、ブランドへの愛着は深まっていきます。
F2転換率の向上を実現し、LTVを上げてゆくスキームの核心は、顧客本位のパーソナライゼーション・マーケティングにあると言えます。
【連載】F2転換率の向上を図るには?
・ Part1: なぜF2転換率は重要か
・ Part2: 初回訪問でまず顧客の心を掴む
・ Part3: 心動かされる提案が2回目の購入の決め手
【関連ホワイトペーパー】
「F2転換率向上3つのステップ パーソナライズド・マーケティングで実現」
文責:園田 真悟(シルバーエッグ・テクノロジー株式会社)