「スタイリングのレコメンド」が持つ効果と課題の解決
ファッション・アパレル業界におけるEC化率(すべての商取引の内、電子商取引【Electric Commerce】が占める割合)は、年々増加傾向にあります。今回は、アパレル系ECサイトにおける優位性構築の手法の一つ、「スタイリング」の提案と、それに伴うレコメンドの活用について紹介します。
着用イメージを想起させるスタイリングの提案
アパレルショップの店頭では、マネキンやおしゃれな店員達が通りがかる人々の目を引き、彼らの足を止めます。センスの良いスタイリングは、顧客に着用イメージを想起させ、購買意欲を高める広告塔としての役割も果たします。昨今、「スタッフスタイリング」や、「スタイリングから探す」などのページを用意するECサイトが増えており、店頭と同じような演出を行うことで、購買を促す方法がトレンドになっています。
ECサイトでのスタイリング提案が持つジレンマ
ECサイトにおける「スタイリング」提案は、ユーザー体験や売上の向上に貢献する可能性を持つ一方で、実施の上でいくつかの課題もあります。
まず1つ目の課題は、柔軟性の高い提案が難しいということです。店頭ではスタッフが顧客と会話しながら嗜好をくみ取り、ひとりひとりに合ったスタイリングを柔軟に提案することができます。一方ECサイトでは、ユーザーと双方向のコミュニケーションを通して各ユーザーに合った提案をするというサービスはまだ難しく、実現にはもう少し時間がかかると考えられています。
現状では、ユーザーの多種多様なニーズに応えられるよう、様々なバリエーションのスタイリングを予め作成しておき、サービス提供をするという形が基本です。ECメディアとしての価値を高める上でも、このようなサービスが重要な施策であることは間違いありません。
しかしながら、バリエーションを増やせば増やすほど、今度はその大量のコンテンツをどのようにユーザーに見せるのかが難しくなっていきます。ここに2つ目の課題である、量と選択の問題があります。
せっかく様々なスタイリングを用意しても、ただ単純に並べるだけではユーザーが自分に合ったスタイリングを見つけることは困難です。それどころか、好みに合わないスタイリングばかりが並んでいることで、サイトへの信頼自体を損なってしまうかも知れません。
この課題に対応しようとした結果、「スタイリング」のコンテンツには、一般的にニーズが高い「新着」を中心に露出させることが多くなり、古い商品はサイトから消してしまう、もしくはサイトの奥に埋もれていく、ということがほとんどになっています。
「スタイリングのレコメンド」で実現できること
このようなジレンマを解消する有効な施策が、「スタイリングのレコメンド」です。サイトの奥に埋もれている「新着では無いが、その人の興味にマッチする」商品を自動的に選び出し、スタイリングアイテムとしておすすめすることで、ユーザーはより自分の嗜好に合った商品を見つけやすくなり、結果として購買に繋がる可能性が高まります。「潜在的に好きなスタイリングに巡り合う」という体験を何度か繰り返すことで、そのサイトを気に入り、「ロイヤルカスタマー」になってくれるかも知れません。
方法と必要な機能
「スタイリングのレコメンド」を行うには、いくつか考慮するべきポイントがあります。
まず、「スタイリングを購入する」というユーザー行動は発生しないため、「購入」ではなく、ユーザーがスタイリングを「閲覧」した結果を計測して、それをベースにレコメンドを行うのが理にかなったアプローチ方法です。スタイリングをレコメンドするためには、スタイリングのマスターデータも作成しておく必要があるでしょう。
次に、サイトで利用しているレコメンドエンジンが、「スタイリングのレコメンド」に向いているかどうかも重要な要素となります。ユーザーがスタイリングや商品を閲覧する直前までの行動を、レコメンド結果に即時に反映するためにも、「リアルタイム」機能と、「導線分析」機能の有無はとても重要です。これらの機能があれば、「まだ閲覧していないが、興味を持つ可能性が高い」スタイリングをレコメンドすることができ、ユーザビリティの向上が期待できます。
まとめ
アパレル系ECサイトの売上アップを目指すには、店舗での接客のように、ひとりひとりの顧客の好みに応じた「スタイリング」をおすすめすることが大切です。サイトの奥に埋もれたニッチな商品や、ユーザー自身もまだ気が付いていない潜在的に好きなスタイルを見つけ出して、ピンポイントにおすすめできるのが、「スタイリングのレコメンド」です。
・多様なニーズに対応するため、スタイリングのバリエーションを拡充しましょう
・レコメンドエンジンは「リアルタイム性」や「導線分析機能」を重視しましょう
・「このサイト、私の好みを分かってる!」という体験が、サイトのロイヤリティ向上に繋がります